ersättning<<報酬>>
―――ersättning―――
(…ビロも…先帰っちゃったし…マスターいつ来るかな…)
ヴィットはきょろきょろと周囲を見回しながら、オーガの死体しかないことにうんざりする。
(…天気…良過ぎて…気持ち悪い…)
坑道内に避難しようか迷うが、マスターが来るのを待つためにオーガロードを閉じ込めた氷塊の周囲にいることを決意する。
(…こないな…マスター…)
「や!ヴィットちゃん。ごめんね?遅くなって」
何処からともなく声が聞こえる。
明らかにマスターの声がする。
「…マスター…どこ…?…」
「ごめんごめん。ちょっと驚かそうと思ってさ!」
ヴィットの影からマスターは現れる。
「この前ヴィットちゃんが戦ってるところを見せてもらったからね。ちょっと研究してみたんだ。」
「…ちょっと…?…」
くすりと笑いながら、腕輪を取り出してヴィットにつける。
首をかしげて首輪を眺める。
「ちょっと作ってみたんだ♪影鬼の腕輪だ。魔力を込めると特定の人物の影に飛ぶことができる。」
「…影に…?…」
「そ♪影に。今、私がやったみたいにね。私はどうやったらできるか理解したから、もう腕輪なしでできるの。」
「…なんで…私に…?…」
「ん~。ご褒美かな?この前いろいろ見せてもらったしね~」
腕輪をよく観察し、邪魔にはならないと判断する。
「…ありがと…気に入った…」
「ちなみに、一つは君がユキトと呼んでいる子。あとは、ゲルン、イロード、ビローア。そして私。まぁ私のところは場所によってはこれないから気を付けてね♪あとは、たぶん場所によっては使えないから、逃げのあてにしちゃダメだよ。じゃお試しで使ってみなよ。私の影に移動してみて。」
言われたヴィットは魔力を腕輪に込める。
すると、腕輪は黒く発光し、体は影に沈んでいく。
(…これが影の中…マスターのは…これ…?…)
恐る恐る影から顔をだして周囲を確認する。
「ん?誰かの気配がする?誰だ!?ルゥ!警戒しろ!」
「ロー?なになに?炎龍の気配はまだしないけど…」
ゲルンは周りを警戒して、イロードの影を見て微笑む。
「どうやって来たの?ヴィットちゃん♪」
「んあ?シロ??どこにいんだよ…ルゥ。」
「…イロ…二人のとき…そうやって…よんでるんだ…?…」
「げっ…シロ!…どうやって!」
「…私は…マスターのところに…出たつもり…だったんだけど…」
じゃ…と伝えヴィットは再度影に潜り別の影から外の気配を窺う。
「…マスタ―の…見つけた…」
「おや?その言い方だと別の影から出ちゃった?」
「…うん…イロとルンのところに…出ちゃった…」
「魔力を感じ取るといいよ♪相手の魔力を感じ取れる?それを目当てに行けばいけるよ。」
などと、使用方法、使用上の注意。などなどを話すと、オーガロードの観察を始める。
「これは、本当に珍しい個体だね。魔力に対しての何らかの抵抗力を持っているんだ。ふむ。ビローアもいい個体を提供してくれる。実験するのに面白いね。まぁ何に使えるかはわからないけど。使えるかな。とりあえず、ヴィットちゃんの魔力解いてもらっていい?」
ヴィットは魔力を解除すると氷は溶ける。
するとオーガロードは息を吹き返す。
『…っ…貴様ら…』
「とりあえず、黙っててね♪」
『ふざけ…』
マスターは指をパチンと鳴らすと、オーガロードはしゃべれなくなる。
「いいこだね。じゃ、そのまま小さくなってね。」
再度指を鳴らす。
オーガロードが小さくなる。マスターの手の平サイズに小さくなり、ポケットに入れる。
「じゃ…この子もらって帰るね。ビローアによろしく♪」
「…じゃ…またね…」
マスターは影に潜っていく。
(…マスター…何でもで…きるんだ…)
マスターのことだ。もう何ができでも驚きはしない。そう彼女は何でもできるんだ。
ビローアを追うか、ゲルンとイロードに合流するかを選択する。
腕輪に魔力を籠めると影に体が潜っていく。
(…さて…ビロの魔力…は…)
ビローアの魔力を感じ取って影から飛び出す。
「…ビロ…お待たせ…」
「…え、ヴィットさん!?…どこにいらっしゃるんですか!?」
「…マスターに…これ…もらった…」
もらった腕輪を見せる。
「何でしょうか?その真っ黒な腕輪…?魔法装備みたいですね。マスターから頂いたのですか?」
「…うん…昨日の…ご褒美…だって…」
「それで、魔法装備ですか。一日でこんなものを作成するなんて、さすがとしか言えませんね。」
「…で…どうしよう…?…すぐに…陰で…いけるよ?…」
「あの二人のことでしたら、心配ないでしょう。とりあえず、領に帰って詰所に報告行きましょう。」
ビローアに言われて二人の帰りを待つことにする。
彼には詰所に報告へ。彼女は酒場へ。
(…そういえば…キライ…薬…とか…変えなきゃ…ダメか…)
キライのいる部屋へいき、眠っている彼の包帯を交換する。
(…この傷痕…少し…残りそう…身体の傷は…ほとんど治ったかな…さすがルンの薬…)
意識の戻らない彼の包帯を取り換え、体を布でふいていく。
「…よし…これで…」
部屋へ戻り、二人の帰りを待つように自室のベッドに横になる。




