Rädda gisslan<<人質救出>>
――Rädda gisslan――
男の名前はイメント。黒い骸骨には入ったばかりのチンピラだ。
イメントはガチガチと音を出して震えている。
先程、酒場で起こったことによる恐怖感。…もそうだが、今自分の身に起こっている現象。理解し難い。
白い少女が触れた箇所が凍っている。
最初は指先だけだったが、今は肘あたりまで。
早く案内しないとどんどん凍らせていくと、そう脅された。
今日連れて来た少年兵のところまで案内すれば命は助けてくれるとの事だ。
ただ、時間制限をつけられた。
彼女が触った右手は指先からどんどん凍り付き、しまいには全身が凍り付つくとの事だ。
地下の入り口まで案内するが、そこまでで肘まで凍ってしまった。
「こ、ここが、入り口だ。」
「…そう…中には…どれくらいいるの?…」
「幹部たちがいる。俺はまだ無断で入ることが許されてない。もし勝手に入ったら、ペナルティがある…」
「…で?…ペナルティを受けるのと…今…ここで…」
白い少女は左手に触れる。すると今度は左手の指先が凍り付くのを感じた。
「…それに…ペナルティは…心配しなくていい…だって…地下にいる人は…私の友達以外…皆殺しだもん…」
イメントの背筋が凍りつくような気がした。
「…幹部って…何人いるの?…達ってことは…どれ位?…」
「頭とあと5人…今日は全員いるはずだ。」
「…ふーん…じゃ楽だね…」
確かにさっきの動きを見るところ、太刀打ちできるのは頭ともう1人だけだろう。
地下へ続く階段を下りると広い空間が広がっている。
気配は五つ。
一つはキライだろう。情報は敵数6人のはず。2人数が合わない。
「…手紙貰って…キライを取り返しに来た…」
相手達はピリピリしているが、ヴィットは気にしない。
絶対的に負けは無いと思っているから。
室内にはロウソクが灯っているが、それ以上の光源はない。
珍しく彼女は叫ぶ
「…キライ!…どこ!?…」
部屋の中央に感じていた気配からモゴモゴと声が聞こえる。口を塞がれているのだろうか。
キライはあそこにいる。と確信したところでキライの元へ駆け寄る。
そこには殴られ、椅子に縛られ、目を隠され、口を塞がれた満身創痍の少年兵がいた。
イロードには魔法を使えることをなるべくやめろと言われたが、今の彼には何も見えていない。それに加えて皆殺しにすれば特に問題はない。
彼の周りに氷の壁を作り、巻き添えが当たらないようにする。
<<Vägg av is(氷壁)>>
直後、彼女はキレる。
許せない。
全員許さない。
ここにいる全員殲滅する。
彼が目を隠されていて良かった。
耳を塞がれていればなお良かったけど…
壁を形成した後に気配を感じた4方向から矢が飛ぶ。
元々接近戦をするつもりはないようだ。
矢を交わし、無数の魔方陣が展開される。
その魔方陣からは矢の飛んできた方向に氷のナイフが飛ぶ。
三つの悲鳴が上がる。
1人は避けたようだ。
さっき飛んできたところとは別の方向から矢がとぶ。
…常に動いてる奴がいる。1人だけ賢い奴がいるみたい。
…でも。
巨大な魔方陣が頭上に展開する。
すると魔方陣の灯りで室内を動き待っていた弓兵を捕捉する。
捕捉した直後隠していたナイフを投げ、眉間に刺す。
…あと2人。
イメントは悲鳴をあげて階段を登る…途中で彼は四つになる。
「勝手に入るなって言ってたろ?」
「まあ…脅されたのはわかるけどな?」
「それを考えて…痛みはないようにしてやるよ。俺は優しいんだ。」
察するに、2人の腕は他の連中とは比べものにならないようだ。
「…面倒くさい…」
ヴィットは彼らを睨み付け、魔方陣を展開して氷のナイフを射出する。
魔方陣の展開を確認した黒い骸骨の頭目は一枚の札を破る
「面倒くさいのはこっちもだ…ったく、なんでこんなのに目をつけちゃったかね?仇討ちなんてするんじゃなかったよ!」
黒い骸骨の2人の目の前に土の壁が現れる。
「…魔法札…」
「へぇ…知ってるんだ?結構高価なんだぜ?」
「頭目…ムダ使いはすんなよ?」
「わかってるよ、ブラウ。そんなカッカするなよ」
「そらしますよ…こいつが俺の部下を殺したんだ」
やっぱり面倒くさい相手と再認識する。
魔法札…札をちぎるだけで魔法が一度だけ使用できる。
作成方法は一部の人間しか知らないため非常に高価。知らない人間も多い。
(…そんなに量は持っていないはず…)
ただ、一枚だけと言うのも考えられない。
問題はあと何枚か… どんな札を持っているか…。
少し考えるが考えたからといってわかるものではない。
使う暇を与えない。それしかない。
ユキトに教えられた魔方陣を展開し 、特別なナイフを出す。
「…一気に…片付ける…」
魔方陣が展開されたのを確認して、黒い骸骨の2人は剣を構える。
「さて、魔女狩りでもやるか!!」
「狩れたら晒し首か?」
「…私を…狩る…?…」
意味不明…なんで私が狩られる側なんだ?と疑問に思いながらも不機嫌な表情のまま一気に距離を詰める。
魔法札を使う暇なんか与えない。
札で作られた壁の向こうに奴等がいる…なら…
ヴィットは壁を斬りつける。すると、壁が両断される。
「嘘だろ…?」
(…うそ…?…ユキトの魔力が籠ってるから?…)
加えて切断面から切った方向へ氷麗が飛ぶ。
「なんだ!?そりゃ!?」
ブラウは両断された壁に驚き、回避が遅れたため氷麗をかする。
「ブラウ!!魔女って例えはあまり間違いじゃないようだな!おい!挟むぞ!」
2人はヴィットを挟むように左右から攻撃を仕掛ける。
練度も高く、左右対称に攻撃が加わる。
片方が上から斬りつけると片方は下から切り上げる。
他国の騎士でさえ2人にかかれば余裕だった。
…今までは。…そう、今までは。
目の前の女はなんなんだ。これだけ攻撃を仕掛けてもいとも容易く避ける。かすりもしない。
少し前にあった、少年たちもそうだった。
前の潜伏先に使ってた家を追い出してきた、あいつも同じだった。
子供としか言いようのない…青髪の少年。
情報によればこいつも、そいつの仲間って言うことらしい。
あのガキも本気じゃなかった。
こいつも。
気に食わない。
ブラウとアイコンタクトを取ると、ブラウは最速の一撃を放つ。それと同時にヴィットの避ける方向へ魔法札を破り火の玉が飛ぶ。
ヴィットは彼がアイコンタクトを飛ばしたのを見逃さなかった。最速の一撃を放ったブラウの手元を狙い剣の根元を切り裂く。
「…!? なっ」
驚いているブラウを掴み火の玉を防ぐ。
火の玉を直撃したブラウは悲鳴をあげる。
彼女はブラウを頭目に投げつける。
「…あとは…お前1人。…」
もう一枚魔法札を破るとブラウは水に包まれる。
それを見たヴィットは水に魔力を込める。
…彼は一気に冷凍保存されてしまう。
「…なっ…」
目の前で仲間が凍りつき後退りをする…
隙を見て彼は逃げ出す。
「…逃げれると思った…?…」
<<Vägg av is(氷壁)>>
出入り口に氷壁が形成される
「…ちっ!」
彼は舌打ちをしながら振り向く。
「どうあっても…」
振り向くと彼女が目の前にいた。
「…なっ!?」
驚いている間に両腕を切り落とす。
「やろうっ!」
足を引っ掛け転ばせると両脚を掴んで魔力を込める
「…いろいろ…苦しんで…」
キライの元へ駆け寄り氷壁を解除して拘束を解く同時に魔力も切ったため氷は水へとなる。
「…大丈夫…?…」
「あ、ありがとう…たくさん…て、敵が…」
「…安心して…全部片付けたから…」
「君が!?」
「…うん…私…強いから…」
肩を貸して酒場から出る。
まだ日は出ていないが、あと少しで上がるだろう。
その足で兵舎へ向かう。




