slakt<<虐殺>>
――slakt――
潜入するため白い少女は建物の周囲を確認する。
侵入できる場所はないか。
イロードのような体格であれば少し変装して酒場に入る事は可能だが、彼女は小柄でかつ外見も特徴的だ。
正面の出口から入るのは得策ではない。
裏口はどうか?
数人の男たちがたむろしており、ここから入る事は困難だ。
彼女が目をつけたのは、二階の窓だ。明かりもついてなく、人が居るような気配もない。
上手く氷の魔法を使えば難なく侵入できそうだ。
(…キライ…無事ていて…)
小さな魔方陣を展開し、壁に取っ掛かりを作成する。
<<Ark av is(氷板)>>
ヴィットは周囲に誰もいないことを確認し、壁を登る。
予想通り部屋には誰もいない。
音もなく窓から侵入するとそこは、使われていない部屋のようだ。
埃を被ったベッド、調度品、などなどが置いてある。
部屋の外にも気配はない。
…隣の部屋には男女がいるようだ。どうやら酒場の二階も娼館として使われてるらしい。
その行為に彼女はそこまで知識があるわけではないが、嫌悪感が生まれる。
(…やっぱ…ここにいる男…全員…殲滅しようかな…)
とか極端な考えが生まれるが、自分には関係ないと落ち着かせ廊下を確認する。
廊下の中央に1人、奥の方に2人、この階の廊下だけで3人。
部屋の中を見渡すと少し高いが天井に上がれそうになっているため侵入した時と同じように登る。
とくに最近人が登った気配はない。
最近は…。埃を被っているが朽ちた人骨が隠されていた。
過去に何らかの理由で殺された人のもののようだ。
ヴィットはここが普通ではないと判断する。
キライは無事なのか気になり始める。
天井をつたい、二階の状態を把握した。部屋は全部で自分のいたところを除いて7部屋。一つ一つはそんなに広くなく、一部屋だけ大きな部屋があった。ヴィットが侵入した部屋の逆側の部屋だ。その部屋には何人かの娼婦が待機しており、あの客は面倒くさいや、次は誰の相手だ等の情報交換を行っている。
中で、一番豪華な服装をしている女性が、酒場の地下に可愛い少年兵がいたとの話をしているが、どうやら周りの人は信じていないようだ。
どうやらキライは酒場の地下にいるみたいだ。
そしてまだ生きていそうな感じ。ヴィットは安堵の息を漏らす。
彼が無事ということを確認出来たところで、彼女は潜むことから、ばれないように戦力を削いで行くことにする。
まずは、廊下の3人。
天井を通り、奥にいた2人が余所見をしている時に、中央にいた1人の背後に降りてナイフで首を切り落とす。
男は何が起こったかわからないまま絶命する。
死体は即時凍らせ、倒れて音が出ないようにする。
再度天井に登り、奥にいた2人の所までいき、2人の間に降りる。片方の男は先ほどと同じように首を切って即死させ、凍結させる。1人は振り向きざま口にナイフを入れ声を出せないようにする。
「…叫ばないで…わかったら…そこのドアを開けなさい…」
男は何が起こっているか理解できなかったが、自分の命が危ないことだけは理解した。言われた通りにするしかない。ドアの先には誰もいない。入って行ったことで咎められることはないが、誰かがいた方が良かったと思う。
…何とか形勢を逆転させ、離れなければ自分の命が危うい。
部屋に入ると、少女から武器を捨てろと要求され、腰下げていた剣を床に落とす。
少女に口からナイフを抜くように要求するが代わりに首筋にナイフを当てられることになった。
「…貴様の、要求は何だ?」
「…友達…取り返しに来た…」
「友達だ?…何の話だ?あんたの勘違いじゃないの?」
「…酒場の…地下…」
居場所がばれていることを悟った男の表情が若干変化する。
その瞬間、鮮血を噴出させて男は倒れる。
「…ありがと…十分…」
…キライを急いで助けなきゃ。
そうつぶやき、ローブをすて、
居場所がわかればもう大丈夫。そしてまだ生きている。そう確信する。
酒場にそのまま降りる。
客か、連中の仲間かそんなのわからない。
私には関係ない。ここにいる連中は気に食わない。はむかう相手は全員…
めんどくさい。ここからまっすぐ酒場の地下へ向かおう、
それまでに私に敵意を向ける相手は全員敵。それでいい。二階から一階へ降りる。
男が一人、異変に気が付く。少女が階段から降りてくる。
しかも返り血らしきものを被っている。
「おい、おまえ!」
「…なに…?…」
「おまえは!?おい!あいつだ!例の女だ!!」
酒場の人間が全員ヴィットを視認する。どうやら全員敵のようだ。
1階に約30人。地下にも数人いるだろう。
一気に気が楽になった。ここにいる全員が敵。
楽な仕事だ。気分も高揚している。
助けるべき相手もここにいない。
「…始める前に…聞かせて…」
「ああ?なんだ?命乞いはきなねぇぞ!?」
「…キライを…連れて行った理由は?…」
「お前、ここに来る前、俺らの仲間を殺してくれなかったか?」
「…ああ…私たちの…ことを襲ってきた…」
「そいつらをどうした?」
「…?…全滅させたよ?…問題あるの?…」
瓶が飛んでくる。コップもだ。
「ふざけんな!?俺の相棒もいたんだぞ!!」
罵声が飛び交う。
「…私を…襲おうとして?…私の家族も…奴隷商売しようとして?…」
―――かんけいない!!
そんな反論も聞こえるが。
「…うるさい…うるさい!…うるさい!!…もう…いいや…」
ヴィットは構える、ナイフを構える。
「…あはは…はははは!…あはははは!!…」
ダムが崩壊したようにヴィットの笑い声が酒場に響く。
男たちはそれぞれ武器を構え、襲い掛かってくる。
<<Oändlig iskniv(氷ナイフ達)>>
ヴィットの背後には巨大な魔方陣が展開され、そこから無数の氷で作られたナイフが飛ぶ。
「…あはは!…あれ?…まだ10人のこった?…あれ?…ユキトに…怒られちゃう…」
つぎは、と残った敵を睨み付けゆっくり近寄る。
「ひっ…氷の、魔女…!」
「…魔女?…私が?…違うよ…私はまだ…見習い…魔女っていうのは…マスターみたいのことを言うんだ…それに…私…こっちのほうが…得意だもの…」
そういって両手にナイフを構えると、目にも止まらす速さでヴィットは駈ける。死体の転がる酒場を彼女は駈ける。
彼女が駈けると一人、また一人、死体が出来上がる。
最後の一人になるまで彼女は駈け続ける。
「…あなたが…最後…あなたには…地下に…案内しなさい…」
「っ…そんな、誰が!」
案内しろ…そう彼女は呟く。じゃないと。
彼女は相手の手をつかみ魔力を込める。
「…早くしないと…」
男の手が白くなり、熱を失う。指、手のひら、前腕が徐々に凍り始める。
「わ、わかった!わかったから!!こっちだ。」
ヴィットと男は地下へ向かう。




