Förgångna själv<<過去の自分>>
―Förgångna själv―
ラマテガが膝を着いたまま真名を敬意を籠めて懇願する。
「フェム様、お願いがあります。」
「俺に?なんだ?」
「一度我らの部族と顔見せをさせてもらえないでしょうか?」
「……いいだろう。ライカンローブ族が俺の眷属の中で一番賢い部族だ。一度会おう。」
そう言うとフェルは立ち去る。
「キライ……といったか?人の身で我らが神とも言える方と契約した人間。」
「……そんな大層なものじゃないですよ。僕は必死だった。それだけです。」
「だがな。そんな人間が……俺は弱いのは許せない。」
「……というと。僕じゃダメですか。」
「お前は勇気があるのか、無いのかわからない奴だな。」
一呼吸を置いてキライは申し訳なさそうにしながら向き直る。
「根は臆病なんです。……この前フェルと会ってから無理矢理装っているだけで。」
「……ふむ。力を見てみたい。いいか?」
「嫌です。といっても見逃してはくれないですよね……。」
「そうだな。」
「どうすればいいんですか?貴方と戦えと……いいますか?」
「安心しろ。俺では無い。今年、新たに護衛隊に入った新人だ。俺がやったら力を見る前に終わる。」
「……そうですね。それはわかってたので安心しました。」
ほっとしながらも目の前にいるライカンローブの族長と戦ってみたかった感もある。
「気が向いたらでいいです。稽古をつけていただけませんか?」
「気が向いたら……な。」
ラマテガが遠吠えすると一体のライカンローブが現れる。
「……族長。よ、よびましたか?」
「おう。よんだ。お前はこれからこの、キライという人間と戦ってもらう。両者本気でな。いいか?」
「…わ、わかりました。」
「よろしくお願いします。僕はキライです。」
「よ、よろしくお願いします。」
両者頭を下げるとキライ早速、双刃刀を構える。ライカンローブは槍を構える。二人の準備が整ったところでラマテガが初めの合図をする。ライカンローブの突きは早かったが、それをキライは双刃刀で受け流す。そしてそのまま双刃刀を首元で止める。
「ふむ。そこまで。キライ、お前はこの国にいつまで残る?」
「ヴィット次第なので、わからないです。」
「明日の朝、ヴィットと一緒にここにこい。あいつの実力も久々に見ておきたい。おいシュガー。お前も来い。流石に情けなさすぎる。お前は鍛え直す必要がある。」
「わ、わかりました。」
そう言ってシュガーというライカンローブは仕事が残っていると戻っていった。
「なんか……僕に似ている、ライカンローブですね。」
自分と似ている彼をみて思う。自分もああだった。きっかけは……些細な……いや、些細ではないが、一歩を出すだけだ。それだけ。きっと彼にも訪れるであろうその瞬間。
「似ている?」
「二、三日前までああでした。」
「ふむ?」
「自身もなくて何ができるかもわからず……。本来の実力も出せない。」
「して?お前には何があった?この二日間で変わったのだろう。フェム様にあったことか?」
「はい。僕は一度、フェルに腕を差し出しました。殺されることを覚悟して。まさか、神獣に、ハキハキ喋れって怒られると思っていませんでした。」
その話を聞いてラマテガが声をだして笑い出す。
「何を笑っているんですか。そんな事です。きっかけは何になるかわからないですが、何かで変われるんです。」
「めずらしいね。親方さんが声出して笑うなんてさ!何かご機嫌な事でもあったのかな?」
「親父が?そんな事あれば明日は雨じゃなく雪が降るぞ?」
「でも今のはラマテガさんの声だったよ?」
「確かにな。」
そこには一体のライカンローブと一人の女性。ライカンローブはラマテガと同様で赤黒い毛並み、2メートルもあろう先ほどとは違い仕事終わりか、憲兵の姿はしておらずもっとラフな格好だ。もう一人のライカンローブと比較しても背が高く、きれいな女性だ。
「なんだ?お前ら来たのか?」
「ああ。ヴィットの同行者の魔力がいきなり集中していたからな。」
「あれ?君の持ってるのって」
アビンザの横にいた女性がキライの持つ双刃刀を手にとる。
「あー!やっぱりそうだ!私の作った最初の武器だ!ね!アビンザみてみて!ほら!ほら!!両天秤の双刃 風!」
「こんな武器を使うやついるもんだな。」
「風?私の……という事は貴女がエルカリさんですか!?」
「ん?ああ。エフトレットに来てもらった名前だけどね。君がキライか……。聞いたよ?ヴィットと一緒日旅してるんだって?ゲルンは元気?あとイロードとビローアだっけ?」
「イロードさんとビローアさんは元気です。」
「おい、ゲルンは?」
「ゲルンさんはいま、怪我で……その。」
「あいつが怪我?何があったんだ?相当悪いのか?」
「意識が戻っていません。何があったかと言われると、僕もその事件後まで意識を失っていたので詳しくは。」
「あいつがそこまで……。信じられ無いが……。」
「……ふむ。」
「そうだ。キライ。双刃刀、これからも使っていくかい?」
「はい。とても使いやすくていいので。」
「ふーん?それのあとに作ったものがある。それを使ってみないか?なかなか使いこなしてくれる奴がいなくてね。」
「そいつは驚くくらいにその武器を使いこなしているぞ。」
「親父が人を褒めるなんてヴィット以来か?」
「へぇ!?本当に?それは嬉しいな。君は魔力をうまく使いこなせるかい?」
「え?魔力ですか?いえ、恥ずかしい話、最近魔力がある事を知ったので、自分の体に溜めるだけです。」
「それができるだけで、充分さ。」




