I South Gate<<南門にて>>
―I South Gate―
「もう直ぐ着くぞ。危うく通り過ぎるところだ。どこに止まればいい?」
流石は神獣。通常の脚力ではない。流れるように風景は変わり、陽が落ちる前に目的地にたどり着く。
「南門の前かね?アポなしでしょ?」
「わかった。」
「…なんで南…?…」
「だってウヴァに会うんでしょ?今は国の南を名前を変えて統治してるからさ。」
「…しってるの…?…」
「アナに頼んでね。」
あらかじめアナにどこへ行けばいいのかを調査済みだったようだ。フェルは門の前に止まるとライカンローブが一斉に彼らを囲む。全員が敵意がないことを示しながらフェンリルから降りる。
「…聞いたことある声…」
「なに?」
ヴィットがそういうとライカンローブ達は武器を構える。少女はみんなよりも一歩前に出る。
「…喧嘩っ早い…変わらない…」
首をかしげるライカンローブ。クンクンと鼻をならす。
「まさか!ヴィットか!?成長しないから逆にわからなかったぞ!!」
「…久しぶり…アビンザ…」
「お前らたまには顔を出せよ!」
「…だって…私は…ウヴァ…無事って…知らなかった…」
「ふーん。そりゃそうか。」
ヴィットは旅の同行者達をアビンザに紹介する。そして門を通るために幾つかのチェックをさせられる。フェンリルは街の中には入らず森に入っていった。
「…ウヴァは?…」
「ウヴァ様なら今の時間なら王宮にいるな。いろいろ大変な感じでな。」
久々にあったためか世間話も多少膨らむ。……アビンザが一方的にだが。
装備の整った兵士が門に押しかける。思わず全員が武器に手をかけて警戒するが、空から女性の声。
「ヴィット!!」
「…え…?…どこから…」
「王女様!!」
ヴィットは女性の落下してくる速度と勢いで押し倒される。
「久しぶり!元気してた?あ、ごめんごめん。あのさ、言ってなかったんだけど、私、無事だったみたい♪」
抱きしめて本物だと認識した後、強い少女は普通の少女になった。涙を流し笑い、目の前のウヴァを何度も何度も確かめる。
アナはキライの袖を引っ張り、その場を一旦離れる。ダナエ達もそれみて着いて行く。
「アナも黙って行動できるんですね。」
「なんか言ったかい?え?誰にそんな口をきいてるの?ほら?後悔なさい。私に謝りなさい!ほら!ほら!じゃないと口が滑っちゃうよ?ほらほらほら!」
「あー。馬鹿だねキライ。」
「僕はちょっと本のあるところに行きたいんだ。」
「本だって?調べたいことがあるなら私に聞きなさい!なにを知りたい?女の落とし方かい?ヴィットは難しいよ?高難易度だよ!」
「違う!そんなんじゃない!精霊に関する本を読んでみたいんだ。」
フェムに言われた通り精霊に関する本を読みたい。基礎の基礎から勉強しなければ。そう思っていた。彼が何を言っているかまだ分かっていない。おそらく本当誰もが知っていることを知らない。
「勉強熱心だね。これを与えよう。」
ダナエがどこからか本を取り出して渡す。
「精霊に関する本だ。まぁ人間が書いた割にわかりやすく書いてある。なにを知りたいかはなんとなくわかってるがきかないでおくよ。」
そう言うとダナエは適当な宿を取り部屋にこもる。キライは一度門を出て木陰で本を読む。そして、ようやくフェンリルのいう意味を理解した。そして一人ダナエに教わったことを復習する。
「勉強熱心だな、小僧。ヴィットと一緒に来た奴だな?」
魔力を全身に漲らせた少年は声をかけられた方向をむく。
「初めまして。僕はキライです。」
「息子が無礼な歓迎をしなかったかな?」
「息子……。ああ。アビンザさんでしたっけ?着いた瞬間囲まれてしまいましたが、あれは正しい行動ですよ。」
相手のライカンローブを見て一目でわかる。毛色もそうだがとてもよく似ている。あれだけの人数がいて、人外、悪魔や天使、しかもそれらが大きな狼に乗って現れたなんて衛兵が来ない方が怪しい。
「俺は魔力に呼ばれてきた。キライと言ったな。俺が会うべき相手がいるのであろ?」
「会うべき相手……?」
轟音を立ててフェンリルが現れる。相当遠くから飛んできたのだろうか?
「お前がライカンローブの族長か?」
「あなた様は!?」
ラマテガは跪きこうべを垂れる。
「フェル?なに?なんかあったの?えっ……」
「黙っていろ小僧。族長、名前を聞かせろ。」
「わ、私の名前はラマテガ。ライカンローブ族の族長、ラマテガです。」
緊張が言葉の端々から漏れている。
「……はあ、いい。緊張するな。俺はおどおどした奴が嫌いなんだ。無理矢理この小僧のも矯正した。」
キライも頭をさげるが、ラマテガというライカンローブの族長が緊張している意味を理解していなかった。
「では、何か我ら一族に用でしょうか?キライという少年の魔力に呼ばれましたがあなたでしょう。」
「ふむ。そうだ。俺がこいつの魔力に俺の魔力を混ぜ込んだからな。お前らに聞きたいことがある。なぜ、お前らの部族は海の向こうからはなれた?海の向こうで俺の眷属が操られた。その責はお前らにもある。お前らは向こう側の存在だったろう。お前らがいればこの状況にらならなかった。……なぜ森を離れた。そしてなぜこちらでなにをしている。」
「無断で森からはなれた事は弁明のしようはありません。こちらに来ているのは縁あってこのエフトレットである王女の護衛になっています。王女には大恩があります。」
「もし、俺が向こうの森の守護に戻れといったらどうする?」
「…………申し訳ありません。我らライカンローブは王女様に恩があります。それに報わねば……。私の命で……」
重たい沈黙、そしてラマテガの一言とともに彼は正座をして腰にさしていた刀を取り出し自身の腹に向ける。それをみてニヤリとフェンリルは笑う。そこに……キライが割って入る。
「フェル!それはいけない!それはしちゃいけない!貴方はその恨みは貼らせたはずだ!もしダメなら俺を……」
「キライ、じゃまだ。それになラマテガ。お前はライカンローブの誇りに従うか。それを聞いて安心した。なにがあっても恩に報いろ。それがライカンローブとしてやるべき事だ。森を無断で離れた事を問いただそうと思ったが、止めにする。」
「有難うございます。我らライカンローブ。フェム様の眷属として誇りを持って王女に従います。」
キライはホッとして腰を落とす。
次は金曜日!
遅れたらごめんなさい。
ノシ




