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みそっかす姫の空腹

ローラ=バッカスはお腹が空いたので食堂に忍び込むことにしました。


それというのも仮初めの婚約者ラルフが邸に居座り続けやがるせいなのです。こほん、ちょっとはしたない言い方になりました。失礼。しかしながら、彼が来なければローラは飢えに苦しむことはなかったはずなのです。

ローラの夕食は家族の食卓が終わった後、こっそりとメイの手で自室まで運び込まれました。しかし、なんということでしょう。全く量が足りなかったのです。

ぐうぅ、とお腹が唸り声を上げるのを聞いて、ローラは思い付きました。そうだ、食堂に行こう、と。我ながらこれ以上の名案はありません。やはり料理は出来立てに限りますね。

「これでよし」

ローラは燃えるような赤毛を隠すためにクローゼットの中から適当なベージュのスカーフを取りだし、ほっかむりみたいに被りました。

自室の扉をそーっと開けて、天敵が廊下にいないことを確認します。忍び足で時には柱の影に隠れながら、左右をキョロキョロ確認し、食堂を目指すことにしました。途中、見知らぬ男性とすれ違ったように思いますが、気のせいでしょうね。

食堂につくと、料理人のサムがぎょっとした顔でこちらを見て、声を上げました。

「ローラお嬢様、何やってんですか!?」

ローラはしーっと口元に人差し指を持っていって、サムに静かにしてくれるように頼みます。こんなところを母やメイに見つかったら正座の上、小一時間説教されるでしょう。それだけは避けなくてはいけません。

「お腹が空いたの。何かもらえないかしら?」タイミングよく、ローラのお腹がぐうぅ、と鳴るのを聞いて、サムは呆れたような顔になりました。

「お嬢様、奥様には絶対に内緒にして下さいね」

サムはそう言うと、ロールパンを三個ローラに渡しました。ローラはパンの一つを口にくわえて、お礼を言いました。

「お嬢様、絶対にみつからないようにして下さいね」

サムが悲壮な顔で言ったのはなぜでしょう。奥様に見つかったら殺されるなんて大袈裟なことを言っていますね。ローラは口にパンをくわえたまま、わかったと返答しました。サムは私を見ながら絶対わかってないと言いますが、面倒くさいのでほっといて部屋に引きこもることにしましょう。

ローラは来たときと同じように障害物にこそこそ隠れながら、自室を目指しました。二階に上がる階段の手前の曲がり角である人物とぶつかり、衝撃でパンが口からぽろりと落ちました。

そこには件の侯爵ご子息が立っていました。ローラは開いた口が塞がりませんでした。

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