みそっかす姫の困惑
ローラ=バッカスはメイ=マーコムから手紙を受け取り、首を傾げました。
「おかしい。おかしいわ!」
ローラはバリバリとお菓子を口に頬張りながら、言いました。ローラが不思議がるのも無理はありません。ローラが送ったのは果たし状です。
「何で恋文になっているのかしら?」
謎。理解不能。侯爵ご子息からの返信はいつも通り、丁寧な文字で綴られ、内容は砂糖いっぱいの甘ったるいものでした。ローラが甘ったるい内容に胸焼けがしたのは言うまでもないぐらいに。
「お嬢様、はしたないですわ」
「メイ、止めないでちょうだい。食べないとやってられないわ」
やけ酒ならぬ、やけ菓子を頬張りながらローラはメイに言いました。ローラの言葉は無理からぬことでした。果たし状を送ってラブレターが返ってくるなんて普通では考えられません。全く何がどうなってこうなったし。
「私も信じられませんでしたわ」
「最近の上流階級の男女間では決闘が流行っているのかしら?手紙にはデートのお誘い嬉しいです、と書いてあったのだけど」
デートに誘った覚えは勿論ありませんでした。また、上流階級の流行については早々に社交界から引きこもったローラにはわかるはずもありません。
「私もしがない男爵家の者ですが、決闘が流行っているなどとは耳にしたことがございません」
決闘と書いてデートと読むなど聞いたことがありません。しかし、あの完璧な侯爵ご子息が読み間違いをするなど考えにくいことでした。
「もしかしたら、お互いに剣を交わして理解を深める儀式の一種なのかも?」
「だとすれば、藪蛇でしたわね」
「この場合どうすれば?」
好感度を下げるために送った手紙が全く功を奏しませんでした。そればかりか、どうも相手の好感度を上げてしまったという事実にどう反応すれば良いのか。
「いい加減、諦めてはいかがでしょう?」
「メイは簡単に言うけど、メイが私ならどうするの?」
「家のためなら喜んでお受けしますわ。メイ=マーコムという個人としては御免被ります」
「その心は?」
「身に余る幸せはいつか自分の身を滅ぼしますわ。この手に収まるくらいが丁度いいのです」
「そうよね!私もその意見に同意するわ」
「剣を交わしてみてはいかがですか?お互いに見えてくるものがあるかもしれませんよ?」
実際会ってみたら考えが変わるかもしれない、というメイの言葉にローラは少しだけ不安になりました。




