嫁とメガネと尻と俺
最近、嫁がメガネを買い替えた。
前のフレームが、歪んでつけられなくなったためだ。
その原因が、またなんとも情けない。
あれは、8月だったと思う。
俺の尻に顔をうずめる事をその時のブームにしていた嫁は、部屋を出る俺を追いかけて、もとい、俺の尻を追いかけていたのだけど、俺が急に止まったために尻がメガネを強打して、メガネが歪んだ。
フレームが斜めになり、またネジも衝撃で緩んでしまい、かけるとずり落ちてくるという状況に。
「としぃさんのせいでかけられなくなった」
とは、嫁のセリフである。
尻をおいかけていた自分のせいにしないのが、なんとも嫁らしい。
嫁らしいのは認めるけど、俺は悪くない。
友人に事情を説明して回る嫁。だが、全員が全員自業自得と答えられていた。最もである。
しかし、そんな事ないよーとむくれるだけで、反省している様子はない。
現に、俺の尻を未だに目で追いかけている。
「としぃさんのお尻はむっちむちー、むっちむち? むっちむちー!」
と、変な歌付きで。
友達と通話してるすぐ横でも歌うのだから、嫌がらせ以外の何物でもない。が、そこは嫁をよく知る友人たち。聞こえてないのか、聞こえてないフリなのか、はたまた嫁に関わるとロクな事にならないと悟っているのか、誰も突っ込みを入れることはない。
そして、あれから数日、いや数週間たったわけだが。
嫁は未だに俺の尻を追いかけている。勿論、物理的な意味で。
そのたびに注意してメガネをはずしてやるのだが、注意されている間尻を追えないのがつまらないようで、人の話を全く聞いちゃいない嫁である。
毎度毎度、なんで尻を追われているのに、わざわざ追いやすいようにしてやらないといけないのか、と思う。
追いかけるとメガネが歪むと学んだんだから、自分で外せ! もしくは、追うのをやめろ! と思うが、言ったところで聞く耳を持たないので、一緒である。
毎日のように、繰り返される攻防。
「なぁなぁ、尻揉んでいい?」
「この前それで追いかけまわして、メガネ壊れただろうが! まずはメガネはずしてから言え!」
「えー、じゃあとしぃさんがはずしてよー」
「なんで俺が」
「また壊れるよ?」
「壊したのお前じゃねーか!」
「としぃさんが逃げたからじゃんかぁ」
「誰でも逃げるわっ!」
最近、会話がとてもめんどくさいです。