食欲の秋
そろそろ秋ですね。っていうか、もう秋か。
読書の秋。スポーツの秋。芸術の秋。○○の秋、と言えば色々ありますが、俺なら真っ先に『食欲の秋』をあげると思います。
焼き魚が大好きな俺としては、脂の乗ったサンマなんかが食卓に出てくると幸せを感じます。秋サイコー。
だかしかし、嫁の食欲の秋は、違うところにあるようです。
「としぃさん、美味しそうだね。一口味見~」
「いてぇっ!」
背後からこっそりと近づいては、肩口を噛みに来る嫁。
本人曰く、歯型の残らない力加減で噛んでいるらしいですが、本気で痛いです。
「うーん、プリプリの歯ごたえがたまりませんなぁ」
「噛むなと、何回言わせたら」
「いや、だって、そこに肩があるんだよ? そりゃ噛むでしょ」
「普通の人は肩を見かけたら噛む、そんな発想はありません」
「え、嫁にはあるよ?」
「なくていいよっ」
何度言っても、噛みぐせの治らない嫁。子犬か、お前は。
噛まないように頼むと、不貞腐れて舐めてきます。
舐められ慣れてないので(いや、普通は舐められ慣れてる人なんていないけど……〉ぬるぬるして気持ち悪いので本当にやめてください。
「二の腕とかをさー、噛んだらもっと美味しいと思うんだよね~」
「ヤメテクダサイ」
「えー、なんでよー?」
「痛いから」
「え、じゃあ痛くないように噛んだらいいの?」
「嫌」
「結局だめなんじゃんか、ケチケチケチケチ」
「ケチでいいよ、噛まないなら」
「いや、噛むけど?」
「なんでだよっ」
「だって、としぃさんの物は嫁の物だもん。許可なんて必要ナッシング!」
「えー、じゃあ、嫁の物は俺の物?」
「そんな事ある訳ないじゃん。嫁の物は嫁の物に決まってるでしょっ」
「……」
こんな傍若無人な嫁ですが、と続いたら『実際はそんな事ありません』的な流れを期待すると思いますが、実際本当に傍若無人なんだから対応に困ります。
俺の服は奪って着るし、俺のお菓子は勝手に食べるし。俺のパソコンは勝手に使うし。
挙げ句の果てには、ベッドの俺の寝場所を占拠して寝るし。
そして最後には、俺の体は嫁の物宣言。
アダルトな意味に聞こえますが、実際はたぶん『いつでも噛めるちょっと歯ごたえのあるガム』位の扱いです。
嫁の口に、これでも食ってろ! と、煮干をねじ込む妄想が今日も止まりません。