まさかの!
「ねぇねぇ、あの子でしょ?私たちの事をうざいとか言った子。お前の方がうざいっつーの」
そんな声が聞こえてきた
「しかもー1組だってー」
「へー頭いいんだー」
クスクスと笑い声まで聞こえてくる
「はぁ…」
あぁゆうの聞いてると馬鹿馬鹿しくなってくる
「ため息つくと幸せ逃げるよ」
前にも聞いた声と言葉が後ろから聞こえる
『きゃー。氷王よー』
その男を見て女たちが黄色い悲鳴を挙げる
「氷王…」
まさかあの?
私が会いたい彼がいるあの氷王?
「あーあ、君は知らなかったみたいだから新鮮だったのに…。はぁ…」
男は去ろうとする
「あ、あの!名前教えてくれますか?」
去ろうとする男の背に声をかける
「僕の名前?良いよ。僕の名前は 神崎 悠司
(かんざきゆうじ)。君は?」
丁寧に名前を教えてくれた
「私は 江崎 薫です」
笑顔をうかべ、会釈をする
「そう。薫ちゃんだね。よろしく!僕の事は悠司でいいよ」
悠司さんは、いい人だ
「あ、ありがとうございます」
「良いよ」
笑顔をうかべたまま行こうとする
「あ、あの!!」
「?」
また、呼び止めてしまった事に悠司は何も言わない
「氷王に、一之瀬 海斗っていますか?」
「…」
悠司が黙りこんでしまった
警戒してしまったのだろうか…
「薫ちゃんは、それを知ってどうするの?」
「え、どうするって…ずっと…ずっと、探してたんです…ずっと…。」
「…何で探してたの?」
悠司が少しだけちかづいてくるきっと、殺すとか彼に害をなすような事を考えていたら捕まえる為だろう…
「お礼を…」
「ん?」
「お礼が、したいから…3年前に助けてくれたから…だから…ありがとうって、言いたくて…
あの時言えなかったから……」
「そう…」
何か考えているようだ
「んー合わしてあげるよ」
思いもよらない答えがかえってきた
「ほ、本当にいいの?」
「ん?良いよ」
「やった!!これで、これでお礼が言えるー♪
いちいち調べなくてすむんだ」
喜びのあまりひょんひょん跳ねてしまう
「はは、子供みたいだね。でもさっきの調べるって?」
「へ?えっ!?あ、あのその、別に悪いことじゃなくて、そそその」
自分で何を言っているか分からない
「落ち着いて?」
「は、はい…あの…」
無理だ、だって『クラスとか色々調べるつもり』だったとか言えない…
じゃぁ何?『昔暴走族やっててその時みたいに』
とか言えるか?普通。無理だろ!!
「ん?何?」
「そ、そのー………あは?」
誤魔化しておく
「まぁ、いいか…とりあえず行く?」
えっ、えっ!!
「えええええええええ」
私はつい声をあげてしまう
「な、何?」
悠司が驚いている
「ご、ごめん、なさい。その今すぐとは思わなくて…つい…」
「あはは、そっか。じゃぁ行こうか」
悠司があらためて言ってくる
「はい!!」
私たちは一之瀬海斗のいる空き教室に向かう