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魔王、勇者を知る

 

【Side:魔王】


 父であり元魔王であるロキが人界に放った魔物を追って、そして何より心の休息を求めて人界に渡った現魔王スルトヘル。とりあえず人界の人々に迷惑をかけまくっているであろう魔物をさっさと滅すべく、かすかに残る父の残留魔力を追って魔物の気配を探っているのだが…


 ◇ ◇ ◇


「…いない?」


 どこにも魔物の気配が感じられないのだ。父の残留魔力は魔物を送ったゲート付近に残っており、そこから魔物が出てきたのは間違いない。しかしそこから探知魔術を使用しても、魔物の存在が感知できない。


 はじめは人界で自分の魔術がうまく作動せず探知できていないとかと思ったが、そのほかの魔術は問題なく発動する。もしや自分が思っているほど探知魔術の範囲が広がってないのかと思い、ゲート地点の周りの街や村に転移しながらがら探知魔術を使用してみたが、それでも見つからない。複数点あった父の開いたゲートのどこへ行っても結果は同じ。

 

 …食糧を狙う魔物な以上、人里近くにいると思ったが、もしや食べつくして山にでも行っているのか?

 いやしかし、これまでに回った街では特に食糧難に陥っているところはなかった。

 

 とすれば、もしや人界の者に討伐された?

 

「まさかねぇ…」


 腐っても中年でもどうしようもなく悪戯好きでも父親は元魔王だ。そんな父が創った魔物。いかに人を襲うように作ってないとはいえ、そこに込められた魔力は有象無象にどうにかできる存在ではないと思われる。というか、そんなに簡単に倒されるものをあの父が創るとは思えない。

 

「これは、調べてみる方がいいかしら?」


 ◇ ◇ ◇


 という事で、各地で調査した結果。

 

「勇者さんか…。まさか父さんの作った魔物を倒せる人間がいるとはねぇ。まだまだ人界も捨てたものじゃないってことね」


 魔物が現れた街の人々に調査した結果、どうやら勇者と呼ばれる人族の男と、それに付き従う仲間たちが各地を回り、父親の放った魔物を滅しているらしい。…お礼を言った方がいいのだろうか。

 

 しかしこの勇者と呼ばれる男。各地で魔物を倒し、また盗賊などに困っている村があればついでに盗賊をつぶしたり、橋が流れたと聞けば掛けなおしてやるお人よしらしいのだが、一つ鼻につく話題が。

 

「お礼を言いに行こうかと思ったんだけど、酷い女好きらしいし…」


 そう。勇者は女とみればいさかいの無く手を出す男らしいのだ。女とみれば王女でも貴族の娘でも女騎士でも、果ては年端もいかぬ幼い娘や夫を持つ夫人まで…。

 

「ちょっとお近づきにはなりたくない人種よねぇ」


 とはいえこのまま何もしないのも、失礼だし。

 

 しばらくどうしようか悩んだが、ここでこうしていても答えは出ない。とりあえず勇者が現在いるというドワーフの国ニダヴェまで行くことにする。

 

 ちなみに。

 

 現在スルトヘルは300歳を超える、魔族的には妙齢の女性だ。その容姿は魔界の華と呼ばれた母親によく似て美しく、中でも父親の色を継いだ青く輝く瞳は彼女を見たものすべての印象に残るだろう。髪は夜が落ちてきたような黒で、腰辺りまで長く伸ばしており、彼女の白い肌に映えている。女性にしてはやや長身で、身体は女性らしい曲線を描いており、魔界であれば上下別の身体にぴったりとした服の上から存分に見て取れる。現在ではその身体はローブに覆われていた。

 

 人界に来て最初の街に入ってすぐに、スルトヘルは自分の着ている服と人界の一般的な衣服が大分異なるとわかった。魔界は炎と氷の世界であり、魔王城があるのは炎の領域だ。そのため、かなり暑い。必然的に身に着けるのは布面積の少ない物で、現在スルトヘルが着ているのもそういったものだ。対して人界の一般的な衣服は、どうやら膝丈まである貫頭衣の下に男性は長ズボンを、女性は足まで覆うスカートを履き、腰のあたりを色合い豊かな細長い布で結ぶようだ。その他、魔術師らしき人物はローブを着用したり、戦闘を生業しているような人物は女性でもズボンをはいたり丈の短い、動きやすい恰好をしていた。

 

 流石にスルトヘルほど身体の面積を覆う布が少ない物を身に着けている人はおらず、最初の街では大量の視線を浴びてしまった。目立つことを本位としないスルトヘルは、とりあえずこちらの世界になじむ恰好をしようと思案した。


 動きやすそうなのは戦闘職の恰好であったが、それらの衣服をそろえるのはなかなかに手間がかかりそうだ。手っ取り早いのはローブを上にかぶってしまう事だろう。それに、魔物の始末で魔術を使用する以上、それを発動しても違和感のない恰好をするのは良いことに思えた。

 そんなわけで、とりあえずではあるがローブを身に着けることで何とか人界の一般人に溶け込む恰好をしている。ちなみにローブは、質の良いビロード素材を使い、見た目の割に軽い、使い勝手の良い逸品だ。

 

 それらの衣服は勿論きちんとした店でそれなりの代金を払って手に入れた。魔界と人界では使用貨幣はことなるため、スルトヘルが身に着けていた指輪を売り、そこそこの金額を手に入れたのだ。ちなみに指輪は父ロキからプレゼントされたものの一つで、似たようなものが山ほどあるため何の躊躇もなく手放した。

 

 そうして手に入れた暗い色のローブをかぶり、無表情で考え事をするスルトヘルは、はたから見れば冷たい印象を持たれがちだ。しかし、親しみやす笑顔、どちらかと言えばツッコミ気質の性格の為、魔界では父親以上にしっかりし、気安い魔王として人気がある。

 

 要は美人で話しかけてみれば気安い人物という事。

 

 そしてここ、ニダヴェの城下町で彼女のような美人を求める男が一人―――。

ローブのしたは水着もどき。

寸止めエロの布石をまきまき。

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