第9話 削除と再生
炎の戦士リクが消えた場所には、黒い灰だけが残っていた。
リアは膝をつき、言葉を失う。
> 「リクが……いない……」
> 「……“削除済み”って、そういうことか……」
照の手の中で懐中時計が震えている。
針は激しく回転し、まるで怒りを表すように火花を散らしていた。
> 「九条……お前は仲間まで“文章”扱いするのか。」
その瞬間、空気が震え、光が散る。
灰の中から小さな光が立ち上がった。
それは“文字の欠片”。リクの名を形作る一粒の光だった。
> 「……これは……」
> 「もしかして、リクの“コード”?」
リアが手を伸ばすと、欠片が彼女の胸に吸い込まれた。
その瞬間、瞳が赤く燃える。
> 「テル……リクの力、まだ消えてない。」
彼女の背に、炎の紋章が浮かび上がる。
> 「リクの“物語”は、私たちの中に生きてる。」
照は頷き、時計を掲げた。
> 「じゃあ書き換えよう。削除じゃなく――再生だ。」
針が静かに動き出す。
青い光が、リアの炎と混ざり合い、
世界の文字がゆっくりと反転を始めた。
> 「境界装置、再構文モード起動――!」
黒い壁に亀裂が走り、リクの姿がぼんやりと現れる。
彼は苦笑いを浮かべた。
> 「ったく……俺の出番、まだ残ってたか。」
リアが涙を拭い、笑った。
> 「当たり前でしょ。あなたは物語の仲間だもの。」
リクは照に親指を立てた。
> 「ありがとな、現実人。お前の物語力、なかなかだ。」
その背後で、九条の声が響いた。
> 「再生……か。
だが“作者”に逆らうなら、その代償は命だぞ。」
天井が割れ、巨大な羽根ペンが降り注ぐ。
それは“物語の神”の手。
照は歯を食いしばり、リアとリクを庇うように立ちはだかった。
> 「俺たちが“読む”限り、物語は死なない!」
光が弾け、世界が書き換えられる――。




