第80話 記憶の海 ―失われた夢の波間で―
《世界図書館》の地下最深部――
そこには、かつてアリアが“共鳴プログラム”を制御していた
記憶の海が広がっていた。
照とリアは、ルミナの残した座標を辿り、
深く青い光の波の中へと足を踏み入れる。
波の一つひとつが、人々の“夢の記録”だった。
リアが息をのむ。
> 「これ……全部、人の心の欠片なの?」
> 「ああ。忘れ去られた夢が、ここで眠ってる。」
アリアの声が静かに響く。
> 「注意してください。
夢の記録は観測者の心に干渉します。」
次の瞬間、照の視界が揺らぎ、
幼い日の記憶が波間に浮かび上がった。
小さな手。泣いているリア。
そして、自分が差し伸べた“救いの手”。
> 「……これが、俺の最初の“物語”か。」
リアがそっと隣に立ち、微笑む。
> 「ねぇテル。
人の夢って、終わっても残るんだね。」
> 「ああ。たぶん、海が覚えてるんだ。
誰かが見た“希望の形”を。」
波が光を放ち、
二人の足元に文字が浮かび上がる。
《夢は、記録ではなく、再生の源》
アリアがその文字を解析し、
> 「ルミナの残した“夢再生プロトコル”を検出しました。」
照は微笑み、ペンを掲げる。
> 「じゃあ――眠る夢を、もう一度、語ろう。」
波が静かに弾け、
光の粒が空へ昇っていく。
それは、世界中の“忘れられた夢”たちが
再び息を吹き返す合図だった。




