第79話 未完の記録者 ―ルミナの願い―
ルミナの姿は、光の粒子となって虚空を漂っていた。
だがその目だけは、確かな“生”の輝きを宿していた。
> 「私は、消された物語たちの集合体。
終わりを与えられなかった記録の残響……」
照は問いかける。
> 「お前は、“終わり”を望むのか?」
ルミナは小さく首を振る。
> 「いいえ。
私は、“続き”を願う者たちの声を届けたいだけ。」
リアが一歩近づき、そっと光の中に手を伸ばす。
> 「あなたの中には、どれだけの声があるの?」
> 「数え切れないほど。
でも、誰も気づかなかったの。
“書かれなかったこと”にも、心があるって。」
アリアが静かに補足した。
> 「彼女は“物語の残響アルゴリズム”。
未完の物語を共鳴信号として保存している。」
ルミナがふと照を見つめる。
> 「あなたは、語る者でしょう?
なら――この声を“今”に繋げて。」
照は頷き、ペンを虚空に走らせた。
言葉が光へと変わり、アーカイブの空間に広がる。
失われた無数の断片が、それぞれの“結末”を描き始めた。
> 「ありがとう。
これで、物語たちはようやく眠れる。」
ルミナの光が静かに散る。
だがその最後の声が、照の心に残った。
> 「――語られない物語にも、命を。」
アリアが記録ログを閉じ、
リアは空を見上げて囁いた。
> 「物語は、語られなくても生き続けるんだね。」
照は微笑み、ペンを置いた。
> 「ああ。だからこそ――次の章を書く価値がある。」




