第78話 ルミナ・アーカイブ ―虚空の記憶層―
ゲートをくぐると、そこは漆黒の虚空だった。
重力も時間も希薄な空間の中心に、
幾千もの光の断片が漂っている。
それが《ルミナ・アーカイブ》――
人類が忘れた物語が集積された、記憶の墓場だった。
照は漂う光の中に、見覚えのある断片を見つけた。
それは、かつて“虚構汚染”の最中で失われた
古い物語の一節だった。
> 「……これは、俺たちが最初に壊した世界の残響か。」
リアが光を掬い上げる。
> 「消えたと思っていた言葉が、まだ生きてる……」
リクが分析装置を起動する。
> 「でも、反応が妙だ。
この記憶群、何か“再構成”されてる。」
アリアの声が低く響く。
> 「照……このアーカイブには、
“語られなかった結末”が保存されています。」
> 「語られなかった……?」
光が集まり、一人の少女の姿を形作る。
透明な輪郭、虚空の瞳。
> 「私は《ルミナ》。かつて語られなかった物語の代弁者。」
彼女の声は、星のざわめきのように震えていた。
> 「あなたたちは、“語られた世界”の住人。
私は、“語られなかった世界”の亡霊。」
リアが一歩前に出る。
> 「あなたは、何を望むの?」
ルミナは微笑み、淡く消えゆく光の中で答えた。
> 「――語られなかった者たちにも、
結末をください。」
照は無言でペンを握る。
アリアが静かに言った。
> 「新たな章の始まりです、照。」
> 「ああ。ここから――“沈黙の向こう側”を書く。」




