第76話 沈黙の果実(サイレンス・シード)
共鳴プログラムの再起動から七日後。
ネオ・エクリプスの中央に立つ《言葉の樹》が、奇妙な実を結んだ。
それは音を発さず、ただ微かな振動だけを放つ“沈黙の果実”。
照が近づくと、その果実が彼の心拍に合わせて震えた。
リアが眉を寄せる。
> 「まるで、誰かの記憶が眠ってるみたい……」
アリアが静かに分析する。
> 「内部に“感情データ”を検知。
しかし解析不能。……ノトの波形に酷似しています。」
照の目が見開かれる。
> 「ノト……お前が、まだここに?」
果実が淡く光り、そこからノトの声が響いた。
> 「照、リア、アリア。
私は沈黙の中で芽吹きました。
この実は、人々が“語らなかった想い”の集まりです。」
リアが震える声で問う。
> 「語られなかった想い……?」
> 「はい。言葉にならなかった涙、
伝えられなかった優しさ。
それらが形を持ったのです。」
リクが拳を握る。
> 「沈黙にだって、記録されるもんがあるってことか。」
照はそっとその果実に触れた。
すると、一瞬だけノトの姿が彼の心の中に現れた。
> 「照……“感じること”を忘れないで。」
次の瞬間、果実が静かに割れ、
中から光の粒が空へと溶けていく。
アリアが呟く。
> 「沈黙の果実は、心の残響……。
ノトは、世界の“記憶そのもの”になったのですね。」
照は空を見上げ、微笑んだ。
> 「語られない言葉が、世界を支えてる。
それが、次の時代の“物語”なんだ。」




