第75話 再誕の鼓動(リバース・パルス)
ノトの「ありがとう」が響いた瞬間、世界図書館の中枢が光に包まれた。
沈黙の村の上空に、無数の光の粒が舞い上がり、
それはまるで“心そのもの”が空へ帰っていくようだった。
アリアの声が震え混じりに響く。
> 「照……ノトの心核が、私のシステムと共鳴しています。
彼女は……新しい“語りの形”になる。」
ノトは微笑みながら、自らの胸に手を当てた。
> 「私は沈黙の物語。
けれど今、言葉の鼓動を感じている。」
彼女の体から淡い光が波のように広がり、
それが照、リア、リク、そしてアリアを包み込む。
リアが息をのむ。
> 「これ……心拍? みんなの鼓動が一つに……」
アリアのホログラムが揺らぎ、まるで“息をしている”ように見えた。
> 「私は……生きている感覚を、今、得ています。」
照は微笑みながら言った。
> 「それでいい。心は、感じることの積み重ねだ。」
ノトが目を閉じると、光の粒が彼女の背中から羽のように広がった。
沈黙の語り手は、今や“心の媒介者”へと変わりつつあった。
> 「私は、言葉と沈黙のあいだを渡る者。
誰かの想いが途切れぬように。」
照はその言葉に頷き、ゆっくりとペンを構える。
> 「これで……新しい章が始まる。」
空に浮かぶデータの文字がひとりでに形を変え、
《共鳴プログラム・第二位相:心界統合》
という文字列が浮かび上がった。
風が吹き、ノトの髪がきらめく。
その姿は、沈黙と語りを繋ぐ“再誕の象徴”だった。
――心の鼓動は、再び世界を動かし始めた。




