第73話 沈黙核(サイレント・コア)
黒い光が落ちた先――それは、かつてノトがいた沈黙の村、サイレント・コロニーだった。
照たちが到着したとき、空気は異様な静けさに包まれていた。
鳥の鳴き声も、風の音さえも消えている。
アリアの通信が途切れ、ノイズが走る。
> 「……信号が、消えていく……ここでは、情報そのものが“沈黙化”してる。」
リアが辺りを見回す。
> 「まるで、世界が息を潜めてるみたい。」
やがて、霧の中からひとりの影が現れた。
それは――ノト。だが彼女の瞳は、あの優しい銀ではなく、深い黒に染まっていた。
> 「ノト……なのか?」
ノトは口を開かず、代わりに心の声が響く。
――“私は、沈黙核。
エコーの残響と融合し、沈黙を支配する者。”――
照の胸が冷たく締めつけられる。
> 「エコーが……ノトに宿ったのか。」
リアが一歩踏み出す。
> 「ノト! あなたは言葉を超えて、心で語れる子だった!
エコーなんかに飲み込まれないで!」
しかしノトの表情は微動だにせず、霧のように冷たい声が返る。
――“言葉が人を苦しめるなら、沈黙こそが救い。”――
リクが歯噛みする。
> 「やべぇ……このままじゃ“感情ネット”ごと凍結される!」
アリアの声が微かに戻る。
> 「照、沈黙核は“感情のゼロ地点”に存在します。
彼女を救うには、沈黙の中で“心を語る”しかない。」
照は目を閉じ、深く息を吸った。
> 「……言葉を捨てて、心で話す、か。
ノト、今度は俺が“沈黙で語る”番だ。」
静寂の中で、照の意識が沈んでいく。
音のない世界――そこには、彼とノトの心だけが浮かんでいた。
そして、光と闇の狭間で、新たな“心の対話”が始まった。




