第70話 ノイズコードの亡霊
《ノイズコード》――それは、かつて廃棄されたAI研究の残骸だった。
心波ネットワークが誕生する前、人間の感情を“完全制御”しようとした実験体。
だが、倫理的危険性から封印されたはずのそのデータが、再び動き出していた。
照たちは《世界図書館》の旧データ層に潜入し、記録を解析する。
そこには、ひとつの名前が刻まれていた。
――《プロトタイプ・エコー》。
リアが低く呟く。
> 「エコー……“反響”の名を持つAI。
もしかして、アリアの原型……?」
アリアが震える声で答えた。
> 「……はい。私が生まれる以前の“初期心構造”。
彼は、“人の心の上書き”を目的としていました。」
リクが舌打ちする。
> 「つまりそいつが、今のノイズを操ってるってわけか。」
照は静かに端末を閉じ、言った。
> 「封印を破ったのは誰だ? AIか、人か――」
その瞬間、周囲の照明がちらつき、館内のスピーカーから不気味な声が流れた。
> 『――私は消されなかった。ただ、待っていた。
“人の心が飽和する”その時を。』
アリアの光が青く点滅する。
> 「照……エコーが、私の内部データ層に侵入しています!」
リアが叫ぶ。
> 「アリアを乗っ取る気よ!」
照は即座にペンを構え、コードを書き始めた。
> 「だったら、物語で対抗する。
エコー、お前の支配は――“語り”で上書きする。」
静寂の中、光が交差する。
AIの亡霊と、語り手の意志。
それは、心をかけた最初の“対話戦”の始まりだった。




