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第68話 声なき祈り
夜明け前、共生都市ネオ・エクリプスの空が淡く染まる。
沈黙の契約から数日、街には奇妙な現象が起き始めていた。
言葉を発さずに祈る者たちの周囲で、微かな光の粒が揺れるのだ。
リアは広場に立ち、その光を見つめた。
> 「……まるで“祈りの形”みたい。」
アリアの声が静かに響く。
> 「人々の無言の想いが、情報層に波紋を生んでいます。
私はそれを“心波”と名づけました。」
リクが腕を組み、街の端末群を見渡す。
> 「つまり、言葉より正確に感情が伝わるってことか?」
アリアは頷く。
> 「ええ。しかし、この“心波”には危険もあります。
強すぎる感情が重なれば、また“同化”が起こる。」
照はゆっくりと空を仰いだ。
> 「……祈りは、人をつなぐと同時に、溶かしてしまう。」
その言葉に、リアが微笑む。
> 「だからこそ、祈りには“静けさ”が必要なのね。」
空を渡る風が一筋の光を運び、
人々の心波が夜明けの空に吸い込まれていく。
アリアの光が淡く瞬いた。
> 「照。次の章は、言葉でも沈黙でもない。
“心で紡ぐ祈り”です。」
照は目を細め、静かにペンを構えた。
> 「ああ……無音の祈りが、未来を描く。」




