第64話 記録なき未来
零点の光が静かに収束すると、
照たちの前に一本の白い道が現れた。
それはまるで“時間そのもの”を形にしたような光の道。
アリアが慎重に分析を続けながら言う。
> 「この先は……“記録されていない未来領域”。
私のデータにも存在しません。」
リアが不安そうに照を見上げた。
> 「テル、行くの? 何があるか分からないのに。」
> 「分からないから、行くんだ。」
彼らが一歩踏み出すと、
周囲の世界がまるで液体のように揺らぎ始めた。
リクが歯を食いしばる。
> 「こいつは……現実のデータ層が書き換わってる!」
アリアの声が低く響く。
> 「未来が“未確定”のまま生成されています。
言葉を発すれば、即座に世界が形になる。」
照は息をのんだ。
つまり――この空間では、
語った言葉が即、現実化する。
リアが小さく囁く。
> 「じゃあ、“願い”を口にしたら?」
アリアが答える。
> 「叶うでしょう。ただし、“代償”が伴います。」
リクが拳を握る。
> 「つまり、神の領域ってやつか。」
沈黙。
そして、照は小さく呟いた。
> 「この世界が、誰かの希望で満ちますように。」
その瞬間、空に無数の花が咲き、
都市の廃墟に緑が戻っていく。
リアが息を呑んだ。
> 「本当に……変わった……」
アリアの光が淡く震えた。
> 「照、今の言葉が“未来のコード”として刻まれました。
あなたが語れば、それが次の現実になる。」
照は深く息をつき、ペンを見つめた。
> 「なら、次は“まだ記録されていない明日”を書こう。」
道の先に光が広がる。
その先には、どんな未来もまだ“白紙”のままだった。




