第6話 揺らぐ現実
暗闇の中で目を覚ますと、そこは見覚えのある場所だった。
六畳の部屋。積み上げた本、散らかった服、
ノートパソコンの画面には現実のSNS。
そこに自分のアカウントがあり、最新の投稿が残っていた。
《俺は今、“物語の中”にいる》
照は息を呑んだ。
「……これ、いつ書いた?」
机の上の懐中時計が淡く光る。
> 『あなたの現実座標が再同期しました。
しかし記憶の整合性は失われています。』
頭が痛い。
リアの笑顔、九条の声、砂嵐の赤い空。
それらがフラッシュバックのように混ざり合う。
> 「……ここが現実? それとも、あっちが?」
パソコンの画面に、リアの姿が映った。
> 『テル、聞こえる? 戻ってきちゃダメ!』
> 「リア!?」
画面越しの彼女が泣いていた。
> 『九条が、世界を書き換えようとしてる!
早く戻って!』
画面がノイズに包まれ、
部屋の壁が音を立てて崩れ始める。
照は懐中時計を掴み、針を必死に回す。
> 「戻る……リアのいる場所へ!」
青い光が弾け、現実が反転した。
気づけば再び、石畳と赤い空の下。
リアが彼を抱きしめ、震える声で言った。
> 「テル……帰ってきたんだね。」
> 「ああ。俺、もうどっちが現実でも構わない。
ただ、今はここで生きる。」
その瞬間、彼の背後で微かな笑い声が響いた。
――九条だ。
> 「ようやく気づいたか。
現実と虚構の区別なんて、初めから存在しない。」
照は拳を握りしめた。
> 「だったら、俺は“生きたい世界”を選ぶ。」




