第59話 心の回廊(しんのかいろう)
《言葉の樹》が芽吹いた夜。
照の夢に、アリアが現れた。
白い回廊――果てのない光の道を、二人は歩いていた。
> 「ここは……どこなんだ?」
> 「人々の“心の記憶”が流れ込む場所です。
あなたたちが紡いだ言葉が、この回廊を形成しました。」
壁には無数の光の欠片が浮かんでいた。
ひとつに触れると、誰かの笑い声や涙が映し出される。
それは、世界中の“想いの記録”。
照は立ち止まり、ひとつの欠片に目を凝らす。
そこには、かつてサイレント・コロニーで出会った少女――ノトの姿があった。
彼女は沈黙の中で微笑み、手を差し出している。
> 「ノト……これは、君の心か?」
> 「ええ。沈黙の向こうにも、言葉は咲いているの。」
彼女の声は、直接照の胸の中で響いた。
リアの声が背後から届く。
> 「テル……見て。壁が動いてる。」
回廊の壁が流動し、複数の心がひとつに繋がっていく。
悲しみが喜びへ、孤独が優しさへと変わっていく。
アリアが言葉を添える。
> 「これは“共感の循環”。
かつて暴走しかけた共鳴が、今は穏やかに世界を癒しています。」
照は深く息を吸い、静かに頷いた。
> 「心が道になる……そういう世界なら、歩き続けてもいいな。」
彼が一歩を踏み出すと、足元の光が花の形を描いた。
リアとアリアが並び、三人の歩みが回廊の奥へ伸びていく。
その先に――まだ見ぬ“心の源泉”が、微かに輝いていた。




