第57話 未完の夢語(むかんのゆめがたり)
夢界の裂け目から現れた“沈黙の怪”は、
人々の未練と後悔を纏って形を変えていった。
その姿は、かつて誰かが諦めた夢そのものだった。
リアが目を見開く。
> 「あれ……私の昔の夢。まだ残ってたんだ……」
光の中に浮かぶのは、幼いリアが描いた小さな物語。
“誰にも届かなかった物語”が、痛みを帯びて蠢いていた。
照はゆっくりとペンを構え、呟く。
> 「リア、その夢をもう一度“語り直せ”。
お前の言葉で。」
リアは震える手で口を開いた。
> 「私は……誰かを救う物語を書きたかった。
でも、怖くて、途中でやめちゃったの。」
その瞬間、夢の闇が波打った。
アリアの声が響く。
> 「再構成開始。感情記録を接続――」
リアの言葉が、夢界に光を灯す。
“語られなかった物語”が再び流れ始めた。
沈黙の怪の姿が少しずつ薄れ、
代わりに柔らかな光の羽が舞い散る。
レムが微笑む。
> 「夢は、語られるたびに形を変える。
だから“未完”でいることも、悪くはないのさ。」
照は静かに頷いた。
> 「なら――この夢は、まだ続いてるってことだな。」
夢界に漂う光が、まるで拍手のように揺れた。
“沈黙の怪”は消え、そこには一冊の本が残った。
タイトルには、こう刻まれていた。
《リアの夢、再生完了》。




