56/81
第56話 夢の根層(こんそう)
レムの導きで、照たちは《夢界接続装置》へと入った。
そこは無数の記憶が浮遊する、色と音のない空間。
リアが息をのむ。
> 「これ……人の夢が集まってるのね。」
光の粒が流れ、幼い笑い声や誰かの祈りが遠くで響いていた。
アリアが静かに告げる。
> 「夢界の根層……“心が最初に形を持つ場所”です。
ここで生まれた感情が、現実へ滲み出している。」
照は足元を見下ろした。
黒い影のような裂け目が広がっていた。
> 「あれが……夢の歪みか。」
レムが頷く。
> 「近年、夢の循環が乱れ始めた。
原因は――“未完の物語”。
語られず、忘れられた想いが夢を蝕んでいる。」
リクが唸る。
> 「つまり、“語られなかった物語”が怪物になってるってことか。」
突如、闇の中から巨大な影が姿を現す。
言葉を持たない声、名を失った悲鳴。
リアが震える。
> 「これが……“沈黙の怪”……」
照はペンを構えた。
> 「なら、俺たちが“書いて”やる。
忘れられた物語に、もう一度名前を。」
アリアの光が照の手に重なり、
夢界の闇が少しずつ形を取り始めた――。
それは、かつて誰かが夢見た“希望”の輪郭だった。




