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第46話 言葉の亡霊
《記憶の花》から生まれた声は、夜を越えて街全体に広がった。
誰もがその声を聞いた――しかし、誰も「何を言っているのか」理解できなかった。
アリアは分析を続けながら、小さく呟いた。
> 「この声……“存在しない語彙”で構成されています。
記録上、どの言語体系にも属しません。」
照はその波形を目で追い、リアに言った。
> 「まるで、“消された言葉”が蘇ってるみたいだな。」
夜、街角のホログラムが一斉に点滅した。
そこに現れたのは、文字化けのような影。
> 「――われらは、語る者を忘れた。」
リクが叫ぶ。
> 「やべぇ、これウイルスか!?」
> 「いいえ。」アリアの声が震える。
> 「これは、“語り捨てられた言葉”の残響。
物語から切り離された、意味の亡霊です。」
リアはそっと両手を組んだ。
> 「語られなかった言葉が、いま叫んでるんだ……。」
照はゆっくりとペンを握り直す。
> 「なら、もう一度“語り直す”しかない。」
亡霊の文字が揺れ、微かに形を変え始めた。
それは――まだ名のない、新しい言語の胎動だった。




