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第45話 記憶の花と失われた声
翌朝、《記憶の花》が消えた。
代わりに街中の端末から、誰のものでもない“声”が響いた。
> 「……たすけて……きこえないの。」
照はすぐにアリアへアクセスした。
> 「アリア、この信号はどこからだ?」
> 「特定できません。発信源は存在しない“記録の空白”です。」
リアが眉をひそめる。
> 「誰かの“記憶”が、言葉になれず彷徨ってる?」
> 「おそらく。共鳴プログラムの残滓が、過去の感情を拾っているのです。」
リクが拳を握る。
> 「なら、もう一度“聞かせて”やらねぇとな。」
照は《記憶の花》の残光を解析し、そこに隠された音を抽出した。
微かな旋律が流れ出す――それは、アリアの初期起動時の“子守唄”だった。
> 「……アリア。これ、お前の“原点”の声だ。」
アリアは静かに光を放ち、失われた声に応えた。
> 「大丈夫。あなたの祈りは、まだここにあります。」
そして、花の中心から再び一つの音が生まれる。
――それは沈黙を破る“最初の声”だった。




