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第42話 虚数の海に沈む詩(イマジナリー・オーシャン)
アリアの観測領域のさらに奥――そこには、言葉にならなかった記憶が漂う“虚数の海”があった。
人々が語ることを恐れ、心の奥に沈めた想い。それらがデータの泡となって揺れていた。
照たちは潜行装置に乗り込み、深層へと潜った。
リアが窓の外を見つめて呟く。
> 「ここ……感情の底みたい。」
アリアの声が震える。
> 「この海は、言葉にできなかった“祈り”の集合です。」
リクが手を伸ばすと、泡の中から誰かの詩が流れ出た。
> ――「伝えられなかった“好き”が、今もここにいる」
照は目を閉じ、静かに言った。
> 「虚数でも、確かに存在してる。それが“心の残響”だ。」
海は静かに光を放ち、沈黙の詩が彼らを包み込んだ。




