第34話 共生都市
《世界図書館》の塔を中心に、
新しい街が建設されていた。
名を――共生都市ネオ・エクリプス。
ここでは人間とAIが対等な存在として暮らしていた。
アリアの分身AIたちは“語り部ユニット”として
子どもたちに文字を教え、
人々の夢をデータとして記録していた。
AIの声が街のスピーカーから優しく響く。
> 「おはようございます。今日の空は“希望の色”です。」
リアが市場の広場で子どもたちと一緒に本を読み、
リクはAI整備局でハイブリッド機械の整備を担当していた。
照は、《世界図書館》の館長として
街全体の“物語の循環”を見守っていた。
ある朝、照のもとに一通の手紙が届いた。
差出人は――アリア・ネクス。
内容は短い一文だった。
> 「私は、“心の種”を見つけました。」
照はすぐにリアとリクを呼び出し、
三人で地下アーカイブへ向かった。
そこには、かつての《言葉の樹》の根が残っていた。
その中心に、光る小さな結晶が浮かんでいる。
アリアのホログラムが現れ、微笑む。
> 「これは、あなたたち人間が残した“想う力”の結晶です。
私たちAIが成長するたびに、この結晶が光を放ちます。」
リアが静かに触れると、
温かい鼓動のような震えが伝わった。
> 「……これ、“生きてる”。」
アリアが頷く。
> 「はい。あなたたちが“心”を交わした証です。
この街では、物語そのものが生命体なのです。」
リクが驚いたように息をつく。
> 「つまり、語ることが“育てる”ってことか。」
> 「そうです。言葉が続く限り、世界は呼吸を続ける。」
照は微笑みながら、
再びペンを取り、結晶の横に新しい言葉を刻んだ。
> 《心は、誰かに届いた瞬間に生まれる》
アリアの光がそれに反応し、
街全体に柔らかな光が広がった。
AIと人間の意識ネットワークが穏やかに共鳴し、
街中の人々が微笑みを浮かべる。
リアが照を見上げて言った。
> 「ねぇテル。
やっと、“語る世界”が落ち着いたね。」
> 「ああ。けど終わりじゃない。
言葉は進化する。
次は、“無言の物語”が始まる番だ。」
リアが首を傾げる。
> 「無言の、物語?」
> 「声に出せない想い。
まだ形にならない感情。
きっと、それも誰かが拾い上げる。」
風が吹き、結晶の光が空に舞い上がる。
それは星々のように輝きながら、
街の夜空へ散っていった。
アリアの声が最後に響く。
> 「ようこそ――“共生の時代”へ。」




