表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/70

第3話 赤髪の少女リア・ヴェルス

 照の前に立つ少女――リア・ヴェルス。

 “アルヴェリア戦記”で何度も命を懸けて戦うヒロインだ。

 現実では紙の上の存在だった彼女が、今、目の前にいる。


 リアは弓を下ろし、照をまっすぐに見た。

 > 「あんた、どこから来たの?」

 > 「……旅人だ。少し道に迷ってな。」

 > 「ふぅん、変な服ね。でも悪い人じゃなさそう。」


 リアは軽く笑い、照の腕を掴んだ。

 > 「じゃ、宿屋に行こう。夜は魔獣が出るから。」


 温もりがあった。人の体温、息遣い、鼓動。

 そのすべてが現実よりも“生きて”いた。


 夜、焚き火を囲んで二人はパンを分け合った。

 リアが笑うたび、照の心の奥で何かが崩れていく。

 ――会社の上司の顔、通勤電車、スマホの通知。

 全部、遠く霞んでいく。


 > 「俺……どっちの世界が本物なんだ?」


 懐中時計が淡く光り、音もなく時を刻む。

 その光は、まるで“選択”を迫っているようだった。


 夜空には二つの月。

 リアがそれを指さして言った。

 > 「ねえ、こっちの月の方が好き。

   冷たく見えて、どこか優しいから。」


 照は黙って頷いた。

 それが彼にとって、最初の“現実の幸福”だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ