第25話 再創造の暁
朝日が昇る。
街に色が戻り、人々の声が再び響きはじめていた。
《言葉の樹》はまだ傷ついているが、
枝の先には小さな新芽――新しい文字のつぼみが生まれていた。
リアが笑顔でそれを見上げる。
> 「また世界が“書き始めてる”ね。」
照は静かに頷いた。
> 「ああ。みんなが、自分の言葉で語り直してる。」
リクが肩をすくめる。
> 「でもよ、また誰かが“終わらせよう”としたらどうする?」
> 「その時は、俺たちが“書き直す”。」
照は懐から古びたノートを取り出した。
それは、かつて《未知の店》で買った“世界へ入れる道具”。
今や、そのノートには現実のすべてが繋がっていた。
> 「このノートは、もう物語を支配するためのものじゃない。
人々の言葉を“保存し、つなぐ”ためのものにする。」
リアが目を輝かせた。
> 「つまり、“世界図書館”を作るのね!」
> 「そうだ。誰もが語り、誰もが聴ける場所。
書くことを恐れず、消すことも責めない。
そんな場所を。」
リクが笑った。
> 「いいな。じゃあ、俺は守衛でもやるか。」
> 「守衛って……門番かよ。」
> 「おう。入口で“物語泥棒”止める係だ。」
三人の笑い声が響く。
その瞬間、《言葉の樹》が淡く光った。
幹の中心に、新たな文が浮かび上がる。
《再創造モード:起動》
《新たな筆記者登録――篠宮照、リア・ハーヴェン、リク・ガロウ》
アリアの声が聞こえる。
> 「おめでとう、照。
あなたたちは、“物語の管理者”になったの。」
> 「管理者?」
> 「世界を正す存在じゃない。
物語を“見届ける者”よ。」
照は微笑んだ。
> 「見届ける……いい言葉だな。」
遠くで子どもたちが樹の枝に触れ、
小さな願いを書き込んでいた。
“いつか空を飛びたい”“だれかを笑わせたい”
そんな声が、光の粒となって舞い上がる。
照は空を見上げ、呟いた。
> 「……Ω、見てるか? お前の“終わり”は、
こうして“始まり”になったんだ。」
風が吹いた。
どこかで、シグマとΩ、二つの声が重なって囁いた。
> 「――それでいい。」
太陽が昇りきる。
街が再び動き出す。
照たちは歩き出した。
《世界は今日も、語られている。》




