第15話 白紙の未来
まばゆい白光が収まったとき、照は静かな草原に立っていた。
風が穏やかに吹き、遠くに見える街は、
現実とも物語ともつかない柔らかな姿をしている。
足元には、ペンがひとつ。
そのインクはすでに乾き、どんな文字も書けなくなっていた。
> 「……終わったのか。」
背後から声がした。
振り向くと、リアとリク、そしてアリアが立っていた。
彼らもまた、どこか現実味を帯びた顔をしている。
> 「九条は?」
> 「彼は消えたわ。」とアリアは答えた。
> 「けれど、彼の願いの一部はこの世界に残っている。」
照は空を見上げる。
白い雲の合間に、巨大なページのような光が漂っていた。
そこに書かれる文字は、まだひとつもない。
> 「あれが……“白紙の未来”か。」
リアが微笑む。
> 「テルが書くなら、どんな物語になるの?」
> 「さあ……でも、もう俺一人で書くものじゃない。」
照はリアとリクの手を取る。
> 「これからは、みんなで生きて、考えて、
言葉にできない想いを、少しずつ重ねていこう。」
アリアが静かに頷く。
> 「それこそが、“続く物語”。
誰かが読む限り、あなたたちは消えない。」
照は笑った。
> 「だったら、俺はもう“作者”なんかじゃないな。
ただの登場人物の一人さ。」
風が吹き、白紙の空に文字が滲む。
《第15話 白紙の未来 ―To be continued―》
その筆跡は、確かに照のものだった。




