第13話 虚構からの侵攻
リアとリクと共に戻ったアルヴェリアの空は、
前とは違っていた。
雲の裂け目の奥に、巨大な都市の影――
現実の東京が、浮かんで見えていた。
> 「……まさか、現実が“侵食”されてるのか。」
照の胸の奥で懐中時計が震える。
針が12を越え、ゆっくりと13を指した。
――存在しない数字。
九条が“物語を現実に持ち出す”ために造った改変コード。
リクが地面を拳で叩く。
> 「このままじゃ、現実とこっちの世界が混ざる!」
> 「そうなれば、両方が壊れる……」
リアが夜空を見上げる。
> 「見て、あの光……!」
空に巨大な羽根ペンが現れ、
東京の街並みをゆっくりと書き込んでいく。
道路、ビル、電車、人々――
まるで小説のページに、現実が“印刷”されていくかのようだった。
その筆を握っているのは、九条鷹臣。
現実世界の彼の身体は既に消滅し、
今や“物語の神”として文字そのものになっていた。
> 「現実を、物語にする気か!」
> 「それが俺の完成稿だ!」
九条の声が雷のように響く。
街の上空には無数の文字列――
《この都市は、彼の筆によって再構成された》
照はペンを構える。
> 「だったら俺は、“書き換えられない現実”を描く!」
地面に文字を刻む。
《現実は、人の心に宿る。
それは誰の筆にも奪えない。》
瞬間、都市の輪郭が揺らぎ、
人々の影が涙のように光を放つ。
> 「やめろ照! そんな理想論で世界は守れない!」
九条の叫びが響く中、照は叫び返した。
> 「理想じゃない! これは“生きてきた証”だ!」
ペンが砕け、青白い閃光が夜空を裂いた。
物語と現実の境界が、再び燃え上がる――。




