表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/75

第11話 空白の作家

 世界が崩れ落ちる中、照は宙に浮かぶ机の上で目を覚ました。

 インクの匂い、紙の感触。

 そこは「神の編集室」の奥、時間の流れのない空間だった。


 机の上には一冊の原稿――

 タイトルは《クロスワールド・ゲート》。

 その作者名には、こう記されていた。


 《著:篠宮 照》


 > 「……俺が、書いてる?」


 紙面に指が触れると、インクが揺れ、

 文字がリアとリクの姿を描き出す。

 だがその輪郭は淡く、今にも消えそうだった。


 > 「俺が手を止めたら……みんな、消えるのか?」


 背後から声が響く。

 > 「ようやく気づいたか。

   君は“作者”であり、“登場人物”でもある。」


 現れたのは一人の女性。

 純白の服、静かな微笑み。

 彼女は「境界装置」を模したペンを手にしていた。


 > 「私はアリア。この物語を監視する“編集者”。」

 > 「監視……? お前も九条の仲間か!」

 > 「違う。九条は“改稿主義者”、私は“原典維持者”。

   彼は破壊による永遠を、私は継続による永遠を求めている。」


 アリアの瞳が照を射抜く。

 > 「篠宮照、あなたに問う。

   物語とは――誰のためにある?」


 照は答えられなかった。

 指先で触れた原稿の中、

 リアが笑っている。リクが肩を叩いている。


 > (俺は……誰のために、書く?)


 その瞬間、原稿が光り、リアの声が響いた。

 > 『テル! お願い、書き続けて! 私たち、まだ生きたい!』


 ペンが手の中で熱を帯びる。

 照は迷わず、紙に文字を刻んだ。


 《リア、立ち上がる。炎の戦士リクが彼女を支える。》


 インクが燃えるように広がり、

 空白の世界に色が戻っていく。


 アリアが微笑む。

 > 「選んだのね。書き手として、彼らを生かす道を。」


 照は息を整え、呟いた。

 > 「ああ。俺は“書く”ことでしか、もう彼らを守れない。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ