48 ゴブリン対策には怪物退治の経験や実績が役に立つ
ゴブリンの来襲。
恐竜以外の脅威への対処が始まる。
とはいえ、出来る事は多くは無い。
いまだ日本の人手は足りず、外に打って出る事は出来ない。
迫ってきた敵を撃退するのがせいぜいだ。
なのだが、この為の人手すら足りない。
せいぜい、侵入が出来ないように防備を固めるくらい。
もちろんこれだけに留まるわけではない。
堤防を兼ねた防壁で侵入を防ぎつつ。
ゴブリンの足跡をたどって、侵入してきた道を見つけていく。
いずれその元を断ち切るために。
これらから通ってきた道を割り出したら、待ち伏せなども行う。
何も居住地や採掘地などまでやってくるのを待つ必要はない。
事前に倒せるならその方が良い。
その為に勢力圏から飛び出して、ゴブリンを倒しに行く者も出てくる。
このゴブリン対策には今までのやり方が活きてくる。
恐竜を相手にしていた経験は、ゴブリンにも有効だった。
各地の防衛については、企業の警備部隊が担当。
これらが採掘地や輸送路に襲い掛かる敵を倒す。
警備部隊が守ってる間に、軍隊が駆けつけて、最終的に敵を殲滅する。
もっとも、軍隊が出て来る事もなく倒してしまうのが常になってる。
それだけ企業の警備が、従業員の武装が進んでるという事だ。
自衛能力の高まりは、異世界で生き残る力を与えてくれる。
周辺の警戒や、敵地の偵察も行われる。
これらは10人程度の小部隊で行われる。
長距離の長期間の偵察には軍隊の偵察部隊が。
比較的短期間で、周辺や近隣には探索者が出向く。
こういった棲み分けや役割分担がゴブリン相手でも用いられていった。
日本の周辺にやってきたゴブリンは探索者が殲滅し。
こういった目撃情報から敵の出現地域を絞って軍隊の偵察部隊が出向く。
そして、ゴブリンの移動経路をあきらかにしてく。
時に太規模な集団に遭遇する事もある。
ゴブリンも休み無く進軍してきてるわけではない。
一日の終わりには休んで次の日を待つ。
こういった場所は決まった地点に出来上がる。
移動できる距離はどのゴブリンもほぼ同じ。
一日に歩ける範囲で寝泊まりを繰り返すからだ。
自然と出来上がった宿泊地。
こうした場所をつなぐ道も見つかっていく。
何度も移動して踏み固められた事で道が出来る。
そこをたどっていけば、ゴブリンの居場所も簡単に見つけられる。
見つければ、あとは倒すだけ。
宿泊地にはたいてい大勢のゴブリンがいるので、応援を呼んで一気に殲滅する。
場合によっては100頭以上のゴブリンがいる事もある。
これを10人程度の偵察部隊で撃破するのは難しい。
やってやれない事はないが、取りこぼしが必ず出る。
これは避けねばならなかった。
ゴブリンは弱い。
賢いとも思えない。
しかし、少しは知恵を持っている。
取り逃せば、情報がゴブリン側に流れる。
それを元に対策をたててくる。
実際、今までにこういった事があった。
これまで何度かゴブリンを倒した。
そのときに何頭かのゴブリンをとりもらした事がある。
やむない事と当初は考えられた。
しかし、これが何度か続いたあと、ゴブリンの動きに変化が見られた。
周囲を警戒する動きが見られるようになった。
その動きは稚拙で、とても効果的とは言えない。
だが、対策をとろうとする姿勢は見えた。
これを見て、ゴブリンが情報をもとに頭を使ってると考えられるようになった。
生き残りがいれば、相手に情報がわたる事になると。
以降、日本側はゴブリンの完全殲滅を旨とするようになった。
この調子でゴブリンが成長したら、大きな脅威になりえる。
今はたいした事はなくても、将来は重大な危険になりうる。
そうさせない為にも、情報を持ち帰らせないように完全に殲滅するしかない。
その為にも、大勢の敵を包囲殲滅するだけに人数が必要になる。
これが少数で動いてるなら問題はない。
確実に倒す事が出来る。
だが、宿泊地はそうはいかない。
かなりの数のゴブリンがまとまっている。
これを完全に殲滅するには、それなりの人数が必要になる。
なので、宿泊地への攻撃はなかなか行われない。
何十人も人を集めるのが難しいからだ。
人口が少ない日本にとって、数十人の部隊を編成するだけでも大きな負担になる。
また、これだけの人間を集める費用も簡単には出てこない。
これが軍隊なら、支払ってる給料で働けとなるだろう。
それでも、燃料や弾薬の備蓄などを考えると、おいそれと
動かせるものではない。
探索者になると、その都度費用がかかる。
必要経費を含めて1日に2万円。
おおよそこれだけの費用がかかる。
長期雇用契約でもしてれば、1日の費用はもう少し安くはなるが。
そう簡単に集められるものではない。
おかげで、ゴブリン退治は時間をかけた作業となる。
頑張っても月に1回か2回。
これくらいの頻度で行う事になる。
費用を考えるとこれが限界になる。
こうなるとやり方を考えるようになる。
なるべく手間をかけずに駆除する方法はないかと。
ゴブリンの場合、出て来る数も問題になる。
強さでいったら、遭遇した怪物の中では最弱だ。
人間よりも弱い。
だが、数が多い。
ファンタジーの設定のように、繁殖力が高い。
おかげで、頭数が多く、一度に大量にあらわれる。
簡単に倒す事は出来るが、大量に出て来ると手間がかかる。
この手間を省く方法はないかと誰もが求めた。
ここでもまた工夫が求められていった。




