47 ゴブリンの南下
「恐竜がいなくなったからなんだろう」
遭遇したゴブリン。
これらがなぜ出現するようになったのか?
衛星写真や出現地域の足跡などから、理由はこう考えられた。
「おそらくだが」
そう前置きして考えがあらわされる。
「今までは恐竜がいたからこの地域までやってこなかったのだと思う。
ゴブリンにとって、恐竜は大きな脅威だ」
確かにその通りだろうと考えられた。
日本は銃を持ってるから対抗が出来る。
だが、ゴブリンは石を投げるか、石槌を叩きつけるくらいしか攻撃方法がない。
そんな武器で恐竜を倒す事は出来ない。
遭遇したら逃げるしかないだろう。
その為、ゴブリンは比較的温暖な地域から追い出されていき。
北の地域にて生きるしかなくなった。
なお、恐竜がある一定の地点から北に向かわないのは温度の為だ。
変温動物である恐竜は暖かい地域でないと活動出来ない。
このため、活動範囲は温暖な地域に限られず。
自然がもたらす寒暖の境界線が、そのまま恐竜やゴブリンの生息域の境目になっていた。
「あくまで予想だが」
説明をする研究者はこう注意をする。
だが、なるほどと思える説得力はあった。
「その恐竜が消えた事で、ゴブリンは南下してきたのだろう」
脅威が消えれば進出してくるのも当然だろう。
「もしかしたら、偵察や調査に来ていたのかもしれない。
恐竜が消えた理由を探りに」
知恵を持ってるならあれる事だ。
日本が大陸に進出してから20年。
異世界転移の直後から始まった資源獲得。
これはそこにいた恐竜駆除の歴史でもある。
闊歩する恐竜を倒し、採掘地を確保する。
輸送路を護るために、周辺地域から恐竜を消していく。
そうなれば、恐竜の存在は消える。
ゴブリンを阻むものは無い。
こんな状態が20年にわたって続いてる。
ゴブリンも何かに気づくだろう。
「たぶんだが、以前から襲撃は受けていたのかもしれない。
南から北に向かう恐竜もある程度はいたのかもしれない。
そんな恐竜がある日を境に消えた。
襲ってくる脅威がいなくなった。
その原因を探りに来ていたのかもしれない」
理由は他にもあるのかもしれない。
だが、何にしても恐竜の存在は大きいだろう。
いるといないのとでは大きな差がある。
遭遇すればまず助からない。
そんな強力な敵がいないのだ。
ゴブリンにとっては降ってわいた幸運なのかもしれない。
そんなゴブリンとの遭遇は今後も増える。
北の地域には多数のゴブリンがいる。
これは衛星写真からも確認が出来る。
寒く実りも少ない地域のあちこちに点在している。
今はまだこの中の一部だけがやってきている。
だが、他の多くも恐竜が消えた事を知ったら?
そのときには大挙して押し寄せてくるかもしれない。
「まいったな」
話を聞いた者達はうんざりしていく。
恐竜を退け、ある程度の安泰は手に入れた。
そう思ったら別の脅威がやってきた。
それも、想定してなかった理由で。
「面倒が増えたな」
恐竜が消えた、おとなしくなったと思ったら。
思ってもいなかった敵があらわれる。
今後はこれらにも対処していかねばならない。




