1 日本、異世界転移
「なんとまあ……」
多くの日本人が抱いた感想はこれだった。
とんでもない事になったものだと。
それもそうだろう。
国ごと異世界に日本が転移したとあっては。
予兆など一切無い。
ある日突然の出来事だった。
日中、人々がいつものように活動してる時。
日本人の頭の中に声が突然響いてきた。
「これより日本は異世界に転移する」
何の事だと思ったその時、日本は既に異世界に転移していた。
それらしい兆候。
地震が起こったとか。
空が光ったとか。
一瞬だけの浮遊感をおぼえたとか。
そういった事など何もなかった。
ただ、転移するという声が聞こえた次の瞬間には、
「異世界に到着したぞ」
と結果を伝えられた。
「戸惑うのも無理はないだろう」
声は続く。
「だが、これは神々の話し合いで決まった事だ」
そういって声は説明を続けた。
なぜ日本が転移する事になったのかを。
取引。
一言で言えばこうだった。
邪神や魔王の存在する異世界。
放置すれば他の世界に悪影響を及ぼしかねない場所がある。
まだ異世界にとどまってるが、いずれ他の世界に侵略を開始しかねない。
そうなる前にこの世界を平定。
邪神や魔王を倒さねばならない。
その役目を日本が引き受けた。
引き換えに、異世界は日本が独占する。
異世界にあるあらゆるものを。
神々はこの取引に応じた。
かくて日本は異世界に転移する事となった。
この転移にあたって、日本とされる土地や場所なども異世界に転移した。
また、日本といえないものは本来の所有者や帰属先と思える国や地域へと送り返された。
人、物、動物、植物、あらゆるものが。
この逆も然り。
海外に渡っていた日本の様々なものが戻ってきた。
ただし、知識や情報。
また、正規に購入・入手したもの。
これらは日本と地球のそれぞれに残る事になった。
せめてものお土産として。
かくて日本は異世界に転移し、新たな国家運営を求められる事になった。
邪神・魔王という敵対する存在を前にして。
「大変だと思う。
だが、勝てば我々はこの世界の全てを手に入れる事が出来る」
アマテルと名乗る神はそういって転移した日本人を励ました。
手にしてるのは、日本の国土。
手にしている機材や資源。
知識や情報。
2000万人の人口。
これが異世界で再出発する日本の全てだった。
感想欄で取り上げられたことがあるので紹介しておく
http://mokotyama.sblo.jp/article/189305005.html