第6話「拠点発見と、はじめての別行動」(後編)
翌朝、目を覚ますと、リピーナがすでに起きていた。
「バルー、おはよー!」
「……元気だな、お前」
「うん! 昨日ちゃんと寝たし! バルの顔見て安心してぐっすり♪」
「寝るなって状況だったろ……」
俺はあくびをしながら小屋の外へ出る。
昨日の雨の名残か、地面がしっとりしている。
(ここが拠点になる……か)
あのゴブリンとの戦いを経て、俺たちはようやく自分たちの居場所を見つけた。
「さて、とりあえず住めるように片付けるか」
「うん! 手伝うよ!」
崩れた屋根、割れた窓、苔むした壁。
けど、直せばまだ使える。拠点にするにはちょうどいい規模だ。
俺はまず入り口の蔓を取り除き、室内の枯れ葉を掃除した。
火の使える場所と、寝る場所。
それさえ整えば、まずは合格だ。
「あ、バル! あれ使ってみたら?」
「ん?」
「昨日食べたゴブリンのスキル、《短剣使い(弱)》だよ!」
「……そういえば」
俺は短剣を取り出し、腰に装備してみる。
すると不思議と、手に馴染む感覚があった。
「なるほどな……これは戦いやすくなってる気がする」
壁にかかっていた古びた布を短剣で切ってみる。
抵抗もなく、スッと切れた。
「確かに、腕が上がってるな」
「すごーい! バル、かっこいい!」
「そりゃまあ、食ったからな……」
ゴブリンから得た能力が、こうやって実際に役立つのを実感すると、
少しずつだけど、この世界に馴染んでいく自分を感じる。
「よし! 今日からここが私たちの拠点だね!」
「……ああ、頼りないけど、俺の家だ」
「うふふ、じゃあごはん作ろう! 今日は……木の実と干し肉でなんとかなるかな?」
「相変わらず飯には本気だな」
「当たり前! 暴食の神だからね!」
リピーナが笑う。俺も、つられて笑った。
新しい生活が、今ここから始まる。