第4話「拠点発見と、はじめての別行動」(前編)
火猪を食べた翌日、俺とリピーナは森の中を移動していた。
「で、今日は何すんだ?」
「拠点探し!」
「拠点って……キャンプとか?」
「ううん、ちゃんとした建物が欲しいな。雨風しのげる、ね」
「そんな都合よくあんのかよ……」
「あるよ。ちょっとボロいけど」
本当にあった。
小さな石造りの平屋。苔だらけで、屋根の一部は崩れてるが、壁はしっかりしてる。
「……廃屋か?」
「昔、誰かが使ってたみたい。今は空き家。住めば都ってことで!」
それなりに広さもある。入り口に蔓が絡まっているが、蹴り飛ばせば問題ない。
荷物を置ける場所があるだけで、精神的にずいぶん楽だ。
(ここを拠点にできれば、しばらく狩りにも集中できそうだな)
小屋の周囲を確認しようと、俺は裏手の林へ足を踏み入れる。
すると、茂みの奥でカサカサと小さな物音がした。
「……何かいるな」
俺が身を低くすると、そこに現れたのは小柄な humanoid——緑色の肌、歪んだ顔。
「ゴブリン……!」
一体だけだが、油断はできない。
相手はこちらに気づき、ぎらついた目で短剣を構える。
「ギィィ……!」
「うおっ、やる気満々かよ!」
こちらに突っ込んできたゴブリンに、俺は咄嗟に反応する。
「《体当たり》!!」
足元を踏みしめ、一気に突進。体当たりの衝撃でゴブリンの体が吹き飛ぶ!
「っわ!?」
……が、勢い余って俺も一緒に飛ばされ、土の崖ごと——
「うわああああああっ!!」
谷へ、落ちた。
落下の衝撃で、視界が一瞬真っ白になる。
「……っ、がはっ……!」
どうにか意識はある。体は痛いが、骨は折れてなさそうだ。
(リピーナは……!)
谷底を見渡すが、彼女の姿はない。
「リピーナ! おい、無事か! 返事しろっ!」
返事はない。代わりに、ゴブリンの死体が横に転がっていた。
俺の体当たりで、即死だったらしい。
だが——
【固有スキル:据え膳食わねば男の恥】発動
対象:ゴブリン(短剣装備)
残飯厳禁。調理して、完食せよ。
「……またかよ」
食べなければ死ぬ。それがこの世界のルール。
近くに落ちていた枯れ枝と石で簡易的に火を起こし、肉を焼く。
臭いは強烈だが、焼けばまだなんとかなる。
「……いただきます」
【完食確認完了】
取得スキル:《短剣使い(弱)》
ステータス補正:敏捷+1/武器扱い:短剣限定(初級)
「おお……!」
体が少し軽くなった感覚。足元のバランスも良くなった気がする。
「リピーナ……無事でいてくれよ」
俺は岩壁を見上げた。登るしかない。