薬草茶
聖女様に浄化活動を託してから二週間くらいが経った
カフェティさん曰くアステリが同行するなら喜んで行なうと言ったそうだ
まぁそうだろうな、と思いつつその様子を遠目に見ると見たことないくらいの真顔で彼女の突進を回避しつつ暗がりの森についていくアステリが居た
ありがとう、お疲れ様と心の中で呟く
その代わりか彼女の突撃がなくなった医務室には執事さんやメイドさんが来るようになった
聖女様のお世話係として奮闘しているらしいが苦労しているのだと愚痴を溢している
全員頭を抱えて真っ青な顔でやってくる
扱いにくい人なのかな、と思いながら治癒魔法をかけるものの効いてる様子は無い
「薬草茶飲みますか?」
「…お願いします」
ルルーディに治癒はお願いして私は人数分の薬草茶を作った
ゆっくり飲み進め始めると多少は落ち着いたのか顔色がマシになっていった
他の人たちの分も頼まれたから追加で作り、いつでも来てください、と言うとお礼を言って持ち場に戻っていった
「聞けば聞くほど本当に聖女なのか怪しくなるね、彼女」
「でも聖属性は使えるらしいから聖女なんでしょ?」
「どういう基準で聖女としてるのか分からないけど私は認めたくない」
ルルーディは眉を寄せ腰に手をあてて大きなため息を吐く
フィトーさんも困ったように頭を振った
二人とも、この前の襲来の時の聖女様の発言を許してないらしい
すみれも机の上で力強く頷いていた
「それより薬草茶作る頻度が増えたから足さないと
また第一に頼むか…それとも三人で行くかい?」
「三人で行きたいのは山々だけど…また誰か来る可能性あるし」
「私が残ってましょうか?」
ルルーディとフィトーさんが悩んでいたため提案すると二人は頷いた
頼りにしてる、行ってくるね、と言って二人は出発していった
そうして一人残されてポーションを作ったりして一時間くらい過ごしていると扉が開かれた
「…お疲れ様」
「お疲れ様です、どうされました?」
入ってきたのはカスタノさんだった
第一軍でも聖女様の奇行に振り回されて体調を悪くしている人が多いらしい
「さっき聖女様付きの執事さん達に作ってしまって…一杯か二杯が限界なんです
それでも良いなら…」
「全然良い、分けるから」
「分かりました、すぐ淹れますね」
火にかけると独特の香りが漂い始める
カップに注いで渡すとカスタノさんは両手で包み込むように持って啜る
「はぁ…」
明らかに疲労の色が濃い
椅子を差し出すと深く腰掛けて項垂れた
「軍隊長と一緒に瘴気浄化に行ってもらえて、その間は助かってるんだけど……問題はその後」
「その後?」
「帰ってきたら、ずっと軍隊長にくっついて今日もアタシかっこよかったでしょ、褒めて褒めてって言ってる
軍隊長は完全に無視してるけど一向に懲りない
一緒に行ってる第三の粗暴さも大変だし軍隊長の機嫌悪くなるし俺らも大変」
想像できる光景に思わず苦笑いが漏れる
今回なぜか第三軍隊が浄化活動についていくと言い始めたらしい
聖女様を気に入ったのか、気に入られたいのか分からないが彼女も彼女で男性たちから言い寄られて舞い上がっているらしい
そんな光景を見せつけられながら仕事を真面目にするのはアステリと第二軍隊長だけ
疲弊しているのが目に浮かぶ
フィトーさん達が戻ってきたら早めに薬草茶を持っていこうかと思った
もう一杯お茶を作りカスタノさんに渡すと、お礼を言って持っていたカップと共に持って仕事場に戻っていった
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
聖女様が浄化にアステリ義兄様と行き始めてから医務室が忙しくなったと報告に上がり始めた
やはり聖女様の態度が大きく問題が耐えず、お世話から解放された時間に治療してほしいと殺到しているらしい
薬草も減りが早くなり頻繁に神の庭に行くようになったんだとか
目の前には聖女様に関する山積みの報告書
なぜこうなったのか考えるまでもない
再三注意はしているのだが全く聞いてくれない
本当にアステリ義兄様のことしか頭にないのだろう
報告書を見るだけで頭が痛くなる
「長いようで短いようで、とんでもなく濃厚な日々を過ごしている気分だ」
「同感です…」
側近兼執事が苦笑いする
ついこの前まではこんなに早く時間が過ぎるなんて思わなかった
まだまだ足りないとは思うがセリーニ義兄様たちやお祖母様の苦労を今ようやく実感した気がする
「殿下、少し休憩されてはいかがですか?
お顔が真っ青ですよ」
「あぁ…ここしばらく寝れてないからかな
ずっと頭の痛みが取れなくて」
聖女様と話すと必ずと言っていいほど頭が痛くなる
あの破天荒さには呆れるばかりで
「無理はいけません、休憩しましょう
お茶を…あ、医務室から薬草茶を貰ってきましょうか」
話に出ていたせいか側近がそう言った
迷惑かもとは思ったが公務が進まないのでは話にならない
頼んでも良いかと頼むと側近はすぐに返事し、医務室まで薬草茶を貰いに行った
「……はぁ」
確かに疲れている
たくさんの方に支えられているからこそ、ここまで頑張れている
そう分かっていても疲労は確実に蓄積していっている
頭を抱えながら報告書を読み進めていると側近が戻ってきた
その手には独特な香りのするカップを持っている
念のため、と側近が毒味をしてから口をつけた
「…不思議な味ですね」
「そうだね、でも確かに効いているみたいだ
痛みが和らいでいく気がする
ありがとう、これなら進みそうだ」
「良かったです、また要望があれば仰ってくださいね」
頼りになる側近に感謝しつつ再び筆を取る
薬草茶を飲み終わる頃には完全に頭の痛みは無くなっていて、その日は久しぶりに寝ることができた
効果を高くしたものを作ってくれたのかと嬉しくなり、また機会があれば飲みたいと思ったが
「…できれば飲まないほうが状況的には良いか」
そんなことに気づき小さく苦笑した




