表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

涙とお礼


軍の訓練が終わった後

廊下を歩いていると見知った後ろ姿が見えた

名前を呼ぶと振り向く彼女は


異世界から来たと語った女性ミヤ


異母兄弟のセリーニが持っているスキル《 鑑定 》で見て

嘘は吐いてないと判断し

帰れないと本能的に悟っている彼女から

要望された生活拠点を準備したり職場紹介をしたりした

それから、すでに一ヵ月以上が経っている

最初はバタバタ過ごしていた感じだが

最近は落ち着いて過ごしている気がする


「医務室に戻るのか?」


「うん、フィトーさん渡す、書類」


俺たちの世界では古語とされている言葉を喋る為

出会った当初は名前しか分からなかった

だが早く慣れる為なのか

今は片言でも俺たちの言葉が喋れるようになり

医務室の仕事にも慣れたようで

フィトーとルルーディとも仲良くやっている

セリーニが聞いたところ



『真面目な子だと

今は単語だけだが聞き取る能力も高いらしい

物覚えも早いとフィトーは言ってた』



と評判は上々らしい

俺が率いている第一軍の中にも、ちらほらと面識がある奴が出てきた

出会った時から表情をあまり変えないから

気をつけて見ているようにはしているが特に不自由な思いもしてないように見える


「戻りました」


「おかえり〜

あれ、アステリ様どうしたんですか?」


「廊下で会ったから くっついてきた」


出迎えたウサギ獣人のルルーディの質問に適当に答える

目が点になっていたけど事実だから気にしない

フィトーは奥でポーションを作っているらしく

ミヤは書類が飛ばないように重りと一緒に机の上に置いていた

するとルルーディがミヤと一緒に魔法の練習を始めた

時間があれば練習しているらしい


「ルルーディ、治癒魔法得意」


ミヤにそう言われルルーディは胸を張る

確かにフィトーよりは彼女のほうが治癒は得意だ

魔力測定をした結果ミヤは水魔法の適正が高かった

だが どうしても軍直属の医務室は治癒魔法を優先される

ルルーディは魔力の量も多いから引っ張りだこになっていることも度々あるくらいだ

フィトーはそこまで魔力の量は多くないし調合のほうが性に合っているらしい


「でもミヤも筋が良いよ

魔力も多いしね

そうだ、アステリ様

どこか怪我してないですか?」


「練習台になれってか?」


当たりだと笑顔で言ったルルーディの頭を乱暴に撫でる

いつものことで笑い合う俺らをミヤは若干、焦って見ていた

今は怪我してないと俺が言うとルルーディは口を尖らせる

まだ不安だからとミヤは小さく息を吐いていた


「そんなこと言ってたら いつまでもできないよ!」


ルルーディが腰に手をあてながら、そう言った瞬間

小さな爆発音が隣の部屋から響いた

三人で覗き込むと顔が煤だらけになったフィトーが煙で咽せながら立っていた


「あはは…新しいポーションと思ったんだけど…ゲホ…ッ

上手くいかないね」


俺たちに気づくと、そう言ってフィトーは困ったように笑う

何をしたらポーション作りで爆発するのか謎だが

軽度の火傷を手に負ったくらいで大丈夫そうだ

するとルルーディが、すかさずミヤに治癒を使ってみてと言った

ミヤは不安そうにしながらもフィトーに許可をとり手に治癒魔法を施す

少し経つとフィトーの手は綺麗に治っていた


「アステリ」


初めて魔法が成功したことにミヤよりもルルーディが喜んでいる

それを眺めていると静かにセリーニに呼ばれた

その表情から大事な話をしに来たと分かる

俺は喜んでいる三人を邪魔しないように静かに部屋を出た


「あれから暗がりの森(ゾフェロスフォレスト)の調査はどうだ?」


医務室から少し離れ中庭に面した廊下に移動すると話を切り出された

俺は頭を横に振り答える

あれから森の見回りを強化してはいるが人が足りない

森の中まで入れれば良いんだろうが中の魔物たちは凶暴だ

入るには少なくとも小隊を組まないといけない


「とりあえずミヤと同じであろう場所を注意して見てるが現れる場所も時間も決まってないみたいだってのが分かったくらいだな」


「…そうか」


そっちはどうだという俺の問いにセリーニも頭を横に振る

記憶にある本を漁ってみたり魔術師たちに協力してもらったものの

ミヤたち異世界人が来ている理由は分からないらしい

帰す方法も昔 使われていたという召喚術でさえ不明なのだ

呼んでもいない人を帰す方法など現時点では不明だった

ミヤに何て言えば良いのか分からず頭を掻く


「…諦めるのには早い

まだ一ヵ月しか経っていないんだから

だが…正直に言うしかないだろう、こればかりは」


セリーニも眉を寄せながら腕を組む

呆れるしかない現状に溜息を吐いた瞬間

後ろで誰かの気配を感じ瞬時に振り向き確認した

誰かが廊下の曲がり角を曲がったのが見えた

間違えるはずがなかった

さっきも見たミヤの後ろ姿だったからだ

何で声をかけず盗み聞きのようなことをしていたのか

不思議に思うと同じように隣で目を丸くしたセリーニがぽつりと言った


「特に聞かれて困る内容の話ではなかったが…帰れないという半信半疑が確信になった、からか…?」


それを聞いて俺は戻り医務室の扉を乱暴に開けた

フィトーとルルーディは驚いた顔をしたが

目の前に立つ俺たちの話を聞いていたかもしれないミヤだけは表情を変えずに立っている

セリーニによればミヤは最初から、どこかで覚悟はしているらしかった

自分の居た元の世界に帰れないかもしれないと

だけど それとこれは別問題な気がする


「……っ…、明日のミヤの予定は⁉︎」


「え、と休みにしてるはず…」


「うん」


歯ぎしりした俺は怒鳴るようにフィトーとルルーディに訊く

ミヤは表情を変えずに立ったまま

言われている言葉を理解していないのかもしれないが


「じゃあ昼から俺と出かけるぞ!

迎えに行くから準備しとけ!」


俺は命令口調でそう言うと医務室を後にした

明日の半休申請をする為に軍総隊長の部屋にイライラしながら入った



    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



突然アステリに出かけるから準備しておけとルルーディの通訳を通して言われた翌日

彼は本当に家に迎えに来て街の外に私を連れ出した

連れて来られたのは大きな湖

今日は天気が良いのもあって水面が反射で光っていて眩しい

二人きりだと思わなかったし何がしたいのか分からないけど

アステリの馬のマヴロスに会えたから良いと思っている


「すっかり仲良くなったな、お前ら」


私に撫でられ機嫌が良くなっているマヴロス

優しい顔でアステリも撫で始めると、さらに上機嫌になった

あれから勉強し単語を聞き取れるようになってから

皆が言っていることは頭の中で繋げられるようになった

喋るのは、まだ難しいけど

だから名前を訊いた時に知ったのだがマヴロスはアステリ以外に懐かないらしい

セリーニさんでさえ撫でさせてはくれるらしいが塩対応


だから初対面の私に撫でられていて驚いてたんだな…


「昼まだだろ?

腹減ったから食おうぜ」


アステリは持ってきていたバスケットを開け

手際良く、お茶をコップに淹れると中のサンドイッチを私に渡してくれた

レジャーシートなんて無いから そのまま並んで草の上に座る

アステリは大きい一口でサンドイッチを頬張る

この世界のサンドイッチはフランスパンみたいな長細いパンに野菜やらチーズを挟むのが主流だ

これはこれで美味しいけどアステリは一本丸ごと食べきるつもりなんだろう

普通なら切り分けられているはずがされていない

軍所属の彼らしいと思いながら

私は手で半分に千切り半分はバスケットに戻してサンドイッチを一口齧った


…静かだな


咀嚼しながら湖を眺める

こんな静かな場所は、この世界に来て初めてかもしれない

ずっとバタバタしていたから周りを見る余裕もなかったし


余計なことを考えてしまいそうでーー


そう思った私は込み上げる気持ちを押し込むように咀嚼していたサンドイッチを飲み込み、もう一口齧った

アステリは気づいているのかいないのか

バスケットに戻した私のサンドイッチを食べたいと言う

すでに一本食べたことにも驚いたけど

さらに食べるのかと目を丸くしつつ頭を縦に振った

アステリは、ありがとうと言うと変わらぬ口の大きさでサンドイッチを頬張った


「…今日、何で連れ出した?」


食べ終わりお茶を飲んでいる時、私はアステリに訊いた

昨日の彼の態度も変だとは思ったけど連れ出されたことのほうが変だと思った

今まで目が合えば手を振るとか廊下で会えば ちょっと話すくらいだった

気にかけてくれているのは、それで伝わってきたし

私もそれだけで満足に思っているのに


「ん〜…ミヤが肩に力入れすぎって思ったから」


そう言われた言葉に目を丸くした

お茶を飲みながら湖を眺めるアステリから顔を背ける


力入れすぎ?

だって仕方ないじゃない

生きていくためには

頑張らないと

必死にならないと

私はーー


ぐるぐると止まらなくなった思考

アステリの顔が見れず俯いたままだったけど

気にした風もなく彼は私を見つめる



『帰す方法も召喚術でさえ分からないんだ

呼んでもいない人を帰す方法なんて現時点では不明すぎる』



ーーもう元の世界には…



「…少なくとも俺は見捨てないから、絶対」



昨日のセリーニさんの発言を思い出し

最後まで考えそうだったことがアステリの言葉で消された

私は驚き顔を上げて彼の顔を見る

アステリは私と視線が合うと優しく笑って


「俺は何があっても、ミヤの味方だ」


ゆっくりと私が理解できるように言ってくれた

それに呼応するようにマヴロスもアステリの後ろで鳴いた


見捨てないでいてくれるの?

味方でいてくれるの?

この世界の人間じゃないのに?


ーー信じても、良いの?


アステリの言葉が耳に残る

嬉しくて視界が滲んでいく


「…っ……本当?

ほんと、見捨てない?」


「あぁ」


「味方いてくれる?」


「もちろん」


確認していく私の言葉に彼は全て返事をしてくれた

その間に涙はどんどん溜まっていく


「ミヤは泣いて良いんだ

怒って良いんだ

その権利がある」


涙が、落ちた


一度、決壊してしまえば戻らない

止めることもできない

あったとしても私は術を知らない

我慢してきたのにアステリに言われるまま泣いてしまった

彼に縋り文句を怒りを叫んでしまった


何で

なんで私だったの


森に放置されて

言葉通じなくて


分からないって

帰れないって何だよ


来たくて来たんじゃないのに


ふざけんな


誰でも良い

帰して

私を


元の世界に帰りたい…っ


アステリは何も言わなかった

何も言わず私の背中を優しく叩いて、あやしてくれた

落ち着いた後も酷い顔をしているだろうに

ハンカチを貸してくれて優しい笑顔を向けてくれた



    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



突然、見知らぬ場所に飛ばされて言葉も通じない世界で混乱しただろうに

ミヤは今まで怒りもしなかった

泣くことさえ誰かに見せたことがない

俺たちに当たることもせず、ただただ冷静に生活していた


冷静ってよりは緊張、かな…


俺たちの話を聞いていたであろう後の表情

言いたいことがあるだろうに

泣きたいだろうに

全てを飲み込んで押し込んでしまう彼女が危うくて


放っとけなかった


「……ーー…ーーー…私ーー…っ!

ーーーー、ーーーー!

…っ……ーーー、ーーーー…!」


多少無理矢理だったかもしれない

だけどミヤは、もう限界だったんだろう

泣きながら徐々に言葉を吐き出した

セリーニから教えてもらっていた俺は単語が一つだけ理解できた

こんな時に俺たちの言葉で叫ぶなんて器用なことできたら

嘘泣きと疑ってしまうと冷静に考えながら俺はミヤの震える背中を優しく叩き続ける

大半は聞きとれないけど


やっと泣いてくれたと安心した


それから体感三十分くらいミヤは泣き続け落ち着いたのか鼻を啜りながら俺から少しだけ離れた

ハンカチを渡すと、お礼を言って彼女は使いだした

赤くなった目元が痛々しいと思いながら彼女の頭を撫でる

泣いてしまったのが恥ずかしいのかミヤは下を向いた

ミヤの頭を撫でる手は止めず俺は周りに視線を移す

気づけば、だいぶ日が傾いている

暗くなると魔物の活動時間になる

そうなる前に帰らないととミヤに言おうとすると


彼女が俺に寄りかかってきた


目を丸くしていると寝息が聞こえてくる

どうやら寝てしまったらしい

腕に抱え直すと安心したような顔で寝ていた


思いっきり泣いて

怒って

叫んで

スッキリしたんだろうな


「……帰ろうか」


ミヤを心配そうに見ているマヴロスにそう言い

俺たちは暗くなる前に街の門をくぐっていった


翌日

いつも通り起き着替えてから一階に下りると

ダイニングキッチンの一角に置いているベッドの上でミヤが起きていた

挨拶すると現状が分からないという顔をしながら挨拶を返してくれる

昨日、泣き疲れて寝てしまったことを伝え

家に送り届けようと思ったのだが鍵がポケットなのか鞄なのか

どこに入れているのか分からず

言い方が悪いが身体をまさぐる訳にもいかず

考えた結果、俺の家に連れてきたと続けた

ミヤが寝ていたベッドは、お客用にしているから気にするなとも


「…迷惑、ごめんなさい」


泣いてしまったことも含めて申し訳ないと思ったんだろうけど

それは俺は嬉しくない

腰に手をあて困ったように笑って


「こういう時は、ありがとうって言うんだよ」


そう言うとミヤは少し目を見開き小さく笑って、お礼を言ってくれた

俺も笑って返事をする

簡単な飯を作り二人でテーブルを囲んで食べ

今日も頑張ろうと意気込みを入れる

するとミヤも真似して拳を握り叫んだ

驚きで、しばらく見つめ合うと二人で笑い合った



    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



ミヤとアステリが一緒に出かけた日から二日後

何か、お礼がしたいと俺の研究室にミヤが訪れた


予想してはいたが、あの日

アステリとの会話を聞いていたのはミヤだった

借りている金貨の半分を返す為に俺を追いかけたら聞こえてしまったらしい

わざわざ部屋に来て盗み聞きしていた謝罪をしてくれた

そして貸していた金貨の半分を渡される

謝る必要はないのだがミヤは気にするのだろう

謝罪も金貨も受け取った

アステリから聞いていたが、よほどストレスが溜まっていたらしい

泣けたことで、それを吐き出せたらしく

あれからミヤは少しだけ表情が柔らかくなっている

まだ、ぎこちないが笑うことも増えた


「アステリの好きな物?」


安心したし良かったと微笑みつつ単純に肉だと思うと答えた

軍は体力が基本だし、よく食堂で肉を食べてるのを見た

そう答えるとミヤは少しだけ考え込んだ

野菜は多分、食べていない

好きではないだろうし残しているのも見た気がする


「…セリーニさんの好きな物は?」


俺のを聞く必要があるのだろうか

そう思いながら首を傾げつつ答えた

ミヤは暫く考えると、お礼を言って部屋を出ていった

アステリに振る舞う料理が決まったんだろう

二人が笑い合うのを想像しながら小さく笑い研究に戻った


「おーい行くぞ、セリーニ」


「は?」


そう思っていたのだが、それから三日後

アステリが研究室に突撃してきたと思えばミヤの家に連れていかれた

驚く様子もなくミヤは出迎えてくれる

テーブルに並べられた料理を見て二人で驚いた

肉料理が多かったが俺の好きな料理もあった

近所の人に作り方を訊いたらしい

仲良くできていることに安心したが何で俺もなのかミヤに訊いた

ミヤはキョトンとした顔をする


「お礼だから」


「いや…アステリにっていう話だっただろう?

この前の お礼をしたいって…」


俺の言葉に、さらにミヤは首を傾げる

彼女はアステリに伝えていないのか確認すると

忘れてたかもしれないと悪びれもなくアステリは言う

俺は溜息を吐きつつ呆れた顔をしたミヤを見つめた

すると礼をしたいとは言ったけどアステリだけとは言ってない

そう返されて俺は必死に思い出した

確かに言っていなかった

アステリにだと思っても仕方ない言い方ではあったが

俺の勘違いだったと分かったが


「…俺は礼をされるようなことはしてない…」


呟いた俺の言葉にミヤが静かに驚いていた

むしろ謝らなければいけないと思っているくらいだ

ただでさえ不安になっていた彼女の気持ちを考えず

帰す方法が不明だと吐き捨ててしまったんだから


「…そんなことないです」


ミヤの言葉に俺は顔を上げる


「この世界の言葉が分からなくて最初すごく不安だったんです

アステリは良い人なんだろうって分かってたけど言葉が通じないって、すごい不安で…

でもセリーニさんが現れて この世界のこととか教えてくれて嬉しかった

なにより私から言い出したことですけど異世界から来た人間に、お金を貸してくれたことも

普通なら持ち逃げされるんじゃないかって貸しませんよ?」


苦笑しつつミヤは話した

スキルがあったとしても自分の話を信じてくれたことや

働く場所も紹介してくれて家も貸してくれて

怪しい人間だと追い出したり捕まえたりせずに自由にさせてくれていることも


「セリーニさんが助けてくれたからだと思ってます」


そう言った彼女の優しい笑顔を見て、ようやく分かった

冷静に自分を見て周りを見て

自分一人で立っているのではないのだと分かっているんだと

俺が思っていたよりも何倍も彼女は強い人だと


「そっか…そうだったね」


確かめるように言った俺をミヤは心配そうに見る

俺は一度、目を瞑ると


「…うん、じゃあ食べようか

アステリが限界みたいだ」


話している内容が分からず

待っているしかなかったアステリを見ながら言った

ミヤも彼を見上げて小さく笑い出した


「うまっ!」


「美味しい…」


俺とアステリの好きな料理が並ぶテーブルを三人で囲む

美味しそうに食べる俺たちを見てミヤは安心したように微笑んだ

ミヤの世界の料理と作り方が似ていたらしい

材料は少し違うが、ほぼ同じだったんだとか

見たことがない料理は彼女の世界の料理らしく

アステリは、よっぽど気に入ったのか隣で嬉しそうに食べ進めている

俺も彼女の味つけが気に入り、いつもより食べてしまった


大量にあった料理は、ほぼアステリが食べ

さすが軍隊長だと笑う俺と残らなくて良かったと笑うミヤ

お礼だから、ゆっくりしててと止められたが

早く終わらせたほうが三人で、ゆっくりできると

慣れた手つきでアステリと皿を洗っていき片づけを終わらせた


「本当に美味しかったよ

ミヤの世界の料理も美味しかった」


片づけを終わらせ紅茶を淹れ暫しの休憩タイム

アステリも美味かったと二人の気に入った料理の話題で盛り上がる

また作ってくれとアステリと冗談混じりに言ってみると

ミヤは時間が合えば、また誘うと快諾してくれた

料理の話が落ち着くと紅茶を飲みながら


「そういえば言語もだけど勉強、頑張ってるみたいだね

フィトーが涙目で喜んでたよ

真面目で熱心な子で助かってるって」


雑務が結構、多い医務室の仕事

ポーション作りに忙しいフィトーに代わって書類を運んだり

できることを必死に探して役に立とうとしている

現に最近は治癒魔法を使って軍の人たちを治しているらしい

ルルーディの負担も減って既に居なくてはならない存在になっている

そう伝えるとミヤは嬉しそうな顔をしていた

そんな彼女を微笑ましく見ながらアステリと笑い合った


「……あ、そういえば図書館、黒い煙何?」


「…黒い煙?」


ミヤの仕事や勉強について話していると

ふと最近、気になっていたと思い出した彼女が言った

俺とアステリは首を傾げる


「勉強、図書館行く

必ず黒い煙、浮いてる」


ミヤの説明に俺たちは顔を見合わせた

アステリは図書館に行くことが無いから分からないと頬杖をついたまま言った

フィトーには言ったのか訊くとミヤは頭を横に振る


黒い煙…まさか…


ミヤに他の場所で、その煙を見たか訊くと

教会の近くにも同じような煙を見たことがあると答えた

アステリと共に目を丸くし予想していたことが的中したと分かる

俺たちの驚きようにミヤも目を丸くしていた


「…アステリ」


「あぁ、まずいな、急いで伝えてくる」


そう言うとアステリは家を出ていった

落ち着くように長めの息を吐くと

ミヤが不安そうな顔で、どういうことなのか訊いてきた


「ミヤは医務室の仕事があったし治癒魔法と、こっちの言語を習得するのが先だったからね

教えてないから知らないのも無理はない



…おそらくだが…ミヤが見た黒い煙は瘴気だと思う」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ