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「…来る、構えろ!」


俺の言葉に全員が剣を抜くと岩陰から魔物が出てきた

(ウルフ)のような姿だったが俺たちよりも大きくて真っ黒な身体

見た目からして討伐依頼があった魔物だと、すぐに分かった

魔物が咆えたことで空気が揺れる


「グリーゾ、コイツか⁉︎」


「あぁ、大元はソイツだ!」


両方の依頼が一致して手間が省けると思った

グリーゾの返答に疑問が浮かびつつ俺はカネリを呼ぶ

それに応えたカネリは剣を地面に突き刺し土魔法で魔物の足を固定した

咆える魔物を一瞬だけでも動かなくする


「囲め!」


攻撃を避けながら俺たちは暴れる魔物を囲んだ

グリーゾは手伝う気がないらしくミヤの隣から動こうとしない

彼女のことは少なからず気に入っているからセリーニも含めて守ってくれると信じて魔物に集中した

たまに指示を出すが全員が臨機応変に動くのには慣れている

何度も一緒に戦っていれば癖や魔法を使うタイミングなど自然に見えてくるからだ

自分より大きい魔物でも動じずに魔法と剣技を合わせて心臓を刺し、あっという間に地面に伏せさせた


「なんだ、もう終わりか…つまらんな」


そう言いながらグリーゾが溜息を吐くのが聞こえた

一気に空気が和らぐが、まだ安心できないと全員を下がらせる

火魔法で魔物を燃やす必要があるからだ

魔物の肉を食べれば蓄積された瘴気を取り込むことと同じで魔物になってしまう

だからこれ以上、魔物が増えないように燃やすようにしている

灰になれば害は少ない

せめてもの弔いで完全に燃え尽きるまで俺たちは見届ける


「魔物でも命を奪っていることに変わりはありませんからね」


ミヤに説明するカフェティ達も魔物を見つめる

すると全員が下がったことを確認し燃やそうとした瞬間、魔物がふらふらと起き上がった

まだ生きていたことに驚き一歩下がる

確実に心臓を攻撃したと思っていたが剣が届いていなかったのか

焦りながらも俺は火魔法を放った

だがそれは当たらず地面を抉り気づけば魔物はミヤに向かって大口を開けていた


「………え」


全員が目を丸くしている間に魔物はミヤを飲み込む

と思ったが、そうなる前にグリーゾが闇魔法で魔物を掴んで止めた

セリーニが驚きで固まった彼女の肩を掴み後ろに下がらせる


「……おい……誰の許可を得て襲っている…!」


流石ドラゴンと言うべきか

俺たちからの攻撃で負った怪我も相まって抜け出すことができないのか

魔物は身動きするもののグリーゾの魔法で骨を折られていき、しばらくすると完全に動かなくなった


「ミヤ、大丈夫か⁉︎」


「う、うん大丈夫

グリーゾさんが止めてくれたから」


「ふん、人間にしてはやると思ったがまだまだだな

娘の髪を掠っていたぞ」


間一髪だったと溜息混じりに言われ、それなら最初から手伝ってくれと言いそうになったが止めておいた

俺たちが慢心していたことは事実だったからだ

グリーゾはミヤが礼を言えば上機嫌になり、もっと言えと催促していてドラゴンのはずなのに今は犬の尾が見える気がして苦笑いをする

グリーゾが単純なのかミヤが猛獣の扱いに長けてるのか

どっちもあり得るなと思いながら動かないうちに魔物を燃やそうとするとセリーニが近くに寄ってきた


「グリーゾ殿、先程の発言の意味お訊きしてもよろしいか」


魔物を見ながら少し考えると疑問に思っていたことをグリーゾに訊いていた

大元がこの魔物とは、どういう意味なのか

魔物の心臓を刺していたのは見えていたからセリーニもまさか動くとは思わなかったらしい


「妙な気配と言っただろう

大きな気配と小さな気配が同じ穴に居たんだ

大きいほうは、この魔物だろうと分かったから言った」


だとしたら小さい気配は…?


セリーニも同じことを思ったらしく俺と顔を見合わせる

大きさで言うと、どれぐらいなのか訊くと少し考えた後グリーゾは俺たち人間より小さかった気がすること以外、分からないと言った

ひとまず魔物を燃やし気配がしていた洞窟に向かうことにした



             ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



襲いかかられた時は驚いて動けなくなったけどグリーゾさんのお蔭で助かった

魔物を燃やし全員で静かに見届けた後グリーゾさんが感じた小さな気配の正体を知るために魔物が棲みついていただろう洞窟に向かう

アステリが中に入ろうとするとカフェティさんが静止をかけた


「奥から何か聞こえます」


全員が耳を澄ますと確かに奥から何か鳴き声のようなものが聞こえた

人間にも聞こえる声の正体が何なのか

グリーゾさんが言っている気配と同じなのか確認するためには奥に行かないといけない

アステリはクレムさんと第二軍隊のアリコさんを指名して中に入ると言った


「カフェティ、こっちの指示は任せたぞ」


「承知しました、お気をつけて」


そう言って三人が洞窟の中に消えていくとグリーゾさんは岩壁を背に横になった

カフェティさんとカネリさんが入口を見張る間から中の様子を見る


「心配ですか?」


「…少しだけ」


中が見えないことと、どのくらいの深さなのか分からない

グリーゾさんがそんなに深くはないと言っていたけど洞窟の中は狭いし逃げ場が無い

魔物が居れば戦闘は避けられない

人間でも悪い人たちなら争うことがあると思う

アステリ達が強いとは分かっているけど、なるべく怪我してほしくない

そう思っているとアリコさんが中から戻ってきた


「中に魔物の子どもと見られる(ウルフ)が居まして瘴気に侵されて動けなくなっています

動かすのも危ないのでミヤさんが持っている浄化のポーションをお願いするとアステリ軍隊長が言っていました」


「分かりました、行きます」


「あとセリーニ様にも来てほしいと」


そう言ってアリコさんに代わってセリーニさんと私が洞窟に入った

渋っていたけどグリーゾさんには入口に残ってもらった

もし魔物が現れたら外に居るみんなを守ってもらいたいとお願いする

光の魔石が入っているランタンを持って、しばらく歩くと鉄の匂いが濃くなる

瘴気に侵された狼がいるだけじゃないのかなと思いながら歩を進めると一番奥で、その理由が分かった


「…まさか…っ」

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