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第三軍隊と商業ギルド

「ここに居るのは分かっているぞ!」


ある日、医務室のドアが乱暴に開けられた

私たちだけじゃなく治療中だった第一軍隊の人たちの視線も扉に集中する

見れば医務室には来たことのない軍服の人

一歩前に出て何の用かとフィトーさんが穏やかに

それでいて怒りを含んだ声で男性に訊く


「ここに美味い飯を作れるメイドが居ると聞いた!

大人しく名乗り出ろ!」


「メイドはここには居ません

勘違いでしょうから、お引き取りください」


バッサリと言い切ったフィトーさんの言葉に私とルルーディは頷いた


「隠しだてするな!

そこの女二人のどちらかだろう!」


「だから彼女たちはメイドじゃありません

ここで働いている、れっきとした医者です」


声を荒げる男性にフィトーさんは淡々と答える

対応は任せていいかなと治療に戻ろうと第一軍隊のベズさんに向き直るとブツブツ何か言っていた

どうしたのか訊くと少し言い淀んだ後に耳打ちで


「あいつが言ってる美味い飯……もしかしたら先日ミヤさんが作ってくれたカラアゲのことかもしれません」


そんなことを言われて目を丸くした

ルルーディが治療していた人もベズさんの言葉に頷く

美味しかったから、また食べたいと第一軍隊の中で話していたのだそう

それを又聞きした第三軍隊の人だろうと小声で話していた

美味しかったと言ってもらえたのは嬉しいと思っていると


「おいっ何を話している!

何か知っているなら教えろ!」


第三軍隊の人が、つかつかと私たちに近づいて来た

ベズさん達はまだ治療が終わってないと前に立つ

背が同じくらいの彼は立ち塞がれたことに腹が立ったのか私を睨んだ


「そいつに用があるんだ、どけ!」


「お断りします、まだ治療が終わってないので

怪我が酷くなったら責任をとってくださるんですか?」


「な…っ、女のくせに生意気な!」


「お引き取りください」


そう言うとベズさん達の剣を持った音がして多分ルルーディも後ろで睨んでいるんだろう

私たちを見て第三軍隊の人は顔を歪める

フィトーさんも彼の後ろに立ったことで敵わないと悟ったのか舌打ちをして去っていった

一気に全員が脱力したように溜息を吐いた


「…なるほど、そんなことが…」


ベズさん達から謝られた後、私はセリーニさんに相談しに行った

怪我人が居る状態で、また医務室に突撃されたら厄介だと思ったのだ

この軍事施設の食堂の人も作れるけれど、それだけじゃ足りないらしい

家でも食べたいと持ち帰りを要求されているみたいで食堂の人たちも第三軍隊には辟易していた


「それなら商業ギルドに登録しようか」


セリーニさんの言葉に首を傾げる

お店を開いたり新しい商品を開発する人が登録するギルドらしい

私が登録する必要があるのか分からなかったけどセリーニさん曰くレシピを登録しておけば誰でも買えるんだとか

だから登録しておけば私に直接教えてもらいに来る人は居なくなる

医務室に突撃されることも無くなる

食堂で無茶を言う人も減るだろうということだった


「それに自分が開発しましたって悪用されることもない

そんなことされれば本当に考えてくれた人に失礼だろう?」


優しく笑うセリーニさんに目を丸くした

私が考えたわけではない料理を私が登録して良いのかと思うと分かっていたみたいだ

考えを先読みされていたことに驚きつつ言われた通りだと思った

レシピとサンプルを持っていったら登録がスムーズに行えると教えてもらい私はお礼を言って、すぐに商業ギルドに登録しに行った


「はい、これで登録は完了になります」


受付でギルドカードを作ってもらい受け取る

これからもレシピの登録しかしないだろうからランクは一番下のCランク

国を越える組織だから入国時にギルドカードを提示すれば入国金は免除されるらしい

そのまま、からあげのレシピとサンプルを受付の男性に渡した

目を輝かせて食べていたから美味しかったんだろうと小さく笑ってしまった


「これからレシピはギルドで販売されることになります

料金は銀貨一枚から五枚で決め一ヶ月に一回、精算に来てください

手元に置いても良いですし孤児院などに寄付ということもできます」


レシピの代金の相場が随分と高いと思ってしまったけど美味しいものを食べたいのは、どこの国も一緒だと説明されて納得してしまった

少し考えて私は精算金額を三分割できるか訊いた



       ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ぐ、軍隊長! 軍隊長!」


ある日いつものように軍の予算の計算を悩んでいるとカネリが慌てた様子で部屋に入ってきた

魔物でも現れたのか眉を寄せたが彼が持っていた袋の中身を見せられ目を丸くする

中には金貨と銀貨が入っていて全員が覗き込んで確認するくらいの量だった


「なん…、どうしたんだコレ」


「落とし物ですか?」


「違います違います!

今日、商業ギルドに呼び出されて行ったらコレ渡されたんですよ!

俺たちにって匿名の方からの寄付だそうです!」


そう聞いて今まで俺たちに寄付なんてされたことなかったから全員が驚いて声を出した

突然のことで頭が追いつかなかったがギルドを通してなら返却するように言われる心配は無いだろうと袋を何度も見返すカフェティたちを見ながら思う

喜びつつ驚きつつ息を吐いて冷静に第二軍隊と分けるために計算することにした


「そしたら第一と第二の足りなかった分を丸々補えるくらいでな

それぞれ服やら剣の修理やら解決しそうで助かったよ」


「それは良かったな」


第二軍隊長に経緯の説明と一緒に金貨を届けたついでにセリーニにも報告した

書類を書きながら俺の話に相槌を打っている

偶然ミヤも居たけど二人は俺の苦悩を知っているから構わず話した

何で寄付されたのかは分からないままだが


「みんな喜んでたの?」


「おう、そりゃもう喜びまくってた

泣いてた奴も居たくらいだし」


「そっか、良かった」


俺の答えに目を細めて微笑むミヤを見て一つの考えが頭に浮かび目を丸くした

微笑む彼女に対して、その考えは間違いないと直感し口を開こうとするとセリーニに阻まれた

書類を書き終えたのかミヤに手渡す

もう今日は届ける書類はないことを訊くとミヤは変わらない様子で部屋から出ていった


「………知ってたな、セリーニ」


「何がだ?」


「今の話の送り主」


「あぁ、軍の予算の話とギルド登録を同時期に聞いていただろうから俺の予想だけどな

だけど俺は商業ギルドへの登録を勧めただけだしレシピの購入金額も利益をどうするのかも彼女が決めたことだ」


「……なるほどな

匿名だったから感謝されたいわけでもねぇんだろうし、今話してたのに何も言ってこなかった」


ただ俺たちが喜んでいたということを知って嬉しそうだっただけ

微笑んでいた彼女を思い出しながら大袈裟なくらいの大きな溜息を吐いた

セリーニは何かを書きつつ小さく笑っている


直接言わないにしても感謝の気持ちは持ってても良いよな…


このまま何もしないのも落ち着かず俺は第一軍隊だけに今回のことを伝えることにした

もちろん直接、声をかけないように徹底してもらうことを忘れずに

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