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そのバザールにおけるいくつかの噂話  作者: 川坂千潮
ユースグリットのバザールに売っていないものはない
5/23

基礎学校 高学年推奨『王子ラーファ』 より抜粋




                                     挿絵 旧精霊院壁画





 第二王子ラーファの母親は、王宮で働いていた奴隷です。(※現在奴隷制度は廃止されました)

 産後の肥立ちが悪く、ゆっくり療養したいと王へ望み、息子と、数人の侍女を連れて、みどり豊かな別邸へ移りました。

 お乳はやれねども息子を抱ける毎日に、しあわせを噛みしめていました。

 ラーファはすくすくと成長しました。勉学より乗馬が好きで、よく森の中を愛馬と駆けていました。

 母はラーファが十歳の誕生日を迎えた翌日、息子や侍女に看取られながら、静かに息を引き取りました。

 ラーファは身の振り方を考えなくてはなりません。

 王の血を継いでいるとはいえ奴隷の子。自分の立場をわきまえていました。

 いずれ王位を継承する兄といさかいを起こすつもりはありません。また、権力が欲しい貴族に利用されるつもりもありません。

 ラーファは母が信仰していた月の精霊院を頼りました。

 院に権力はありませんが、万象を司る大精霊と、奉る巫女たちには、王家でも無作法は許されません。

 ラーファは王宮へ戻らず、月の精霊院預かりとなりました。

 母の侍女たちも、そのまま王子に仕え、主人の忘れ形見を大切に育てました。

 こうしてラーファは月の大精霊アイラスナイ様の庇護のもと、勉学にはげみました。


 



  中略



 ある日、王さまがおふれをだしました。

「小精霊を捕らえなさい」

「報奨金があります」

 騎士や魔術師、冒険者たちによる精霊狩りがはじめました。

 捕まえられた小精霊は、宮廷魔術師が用意した特別なランプに閉じ込められました。

 小精霊はヒトの姿をやめて、毛玉のようなすがたに変わりました。

 ランプにかけられた幽閉の魔術を阻むよう己をつくりかえたのです。

 こどもたちは小精霊を守ろうとしましたが、大人には敵いません。市井の人々も、どうしてこんなおふれがでたのか、戸惑いました。

 突然の精霊への暴挙に許せないと立ち上がったのが、ラーファでした。

 十九歳の彼は、すっかり精悍な青年となりました。

 精霊院の礼装を纏い、堂々と王宮を歩く王子に、大臣たちも目を奪われたといいます。

「父上、兄上、人間と精霊はなかよく、共に生きてきました、こんなのは間違っています!」

 ラーファは見ていました。

 小精霊たちは姿を変える前に、こどもや精霊院へ最後のあいさつにやってきました。

 小精霊とおしゃべりや、お菓子のわけっこができなくなったこどもたちは、かなしいけれど友達が傷つかなくなるならよかったと、笑顔でおわかれをしました。

「ラーファ、我が息子よ、わかってくれ、狩りは必要なことなのだ」

「小精霊の力があれば、この国はもっと発展するんだよ」

 父と兄に狩りを止めさせようと何度も説得しましたが、聞く耳を持ってもらえませんでした。

「たとえに技術が発展しようとも、こどもたちが泣き、精霊の声が途絶えてしまっては、ピクシェノスは本当に豊かになったといえるのでしょうか、私は思わない」

 とうとう、ラーファは王家と闘う決意をしました。


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