海上都市ラルーナ[完]
飛竜襲来事件から日が経ち、ラルーナを離れるときがきた。
都市に来て良かったぜ。温泉も満喫できたしな。
「ラルジャン殿、ミストラル夫人! 出都されるのですか?」
こちらに気づいた門番が駆け寄ってくる。
「ああ。一ヶ月経ったからな。仕事がんばれよ!」
「わらわは、もう少し温泉を堪能したかったのじゃがなぁ」
ミストラルが、名残り惜しげに繁華街の方を見た。
お前は、もう充分堪能しただろ!まだ足りないのか!
「世話になったな。また機会があれば、寄らせてもらうぜ」
「それが、都市長からお礼状と勲章を預かっておりまして! これだけ受け取ってください」
門番が、去ろうとする俺たちを、焦り声で引きとめる。
都市長……、貴族か。めんどくせぇな。あー、でも、受け取らねぇのも、禍根を残すかぁ?
「おお! ありがたく受け取っとくぜ! よろしく言っといてくれ」
「かしこまりました! 海のご加護があらんことを!」
海の加護……? 海人族の祈りか?
門番の見送りを受けて、俺たちは都市から見えない位置まで歩いた。
海の泡の影で立ち止まる。
「もう大丈夫そうかや?」
「ああ。お面取っても大丈夫だぞ」
「つけてる方が楽じゃ」
そんなに気に入ったのか!?
俺は常にその面姿を見てなきゃいけねぇのかよ!
そういや、礼状貰ったな。
懐から、紙を取り出す。
そこには、都市を守ったことの礼と、勲章のことが書いてあった。
「その勲章を見せると、海人族が治めている領地には無条件で入領できますだとおぉ?!」
大層な礼を貰っちまったぜ。
文の最後には
「はあっ!? プルヴィア・ラルーナだってぇ?!」
都市長 プルヴィア・ラルーナ
と書かれていた。
あいつは、結局、一人何役やってるんだ……?
業務量の多さを想像し、戦慄する。
……さあ、何役でしょう?
と、微笑むプルヴィアが想像できた。
怖ぇぇ……!