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英雄とドラゴン  作者: ヒトミ
第一部の一話ごと完結番外編
56/60

ルシオールとグレースの出会い

私はロプトル帝国皇太子の、エクセルシオール・ゲンナイオン・ロプトルだ。


長いからルシオールと呼ぶといい。


ロプトル帝国という国は、北に極寒、西に山岳、南に大森林、東南に砂漠、東が他国という中々に厳しい位置にある。国は豊かだが遺跡という脅威も存在する。


帝王学を学び始めて思ったことは、この国を守るにはまず、国内の脅威を排除し、それから他国に攻めいられないよう国力を喧伝するということだった。


「皇帝陛下。今日から、国内脅威排除のため、私は探索者となります」


「断定するのがお前らしいな。死ぬことだけはゆるさんぞ」


「承知しております。ですが、万が一の場合は、弟のレスプランドールに継承権を譲渡いたします」


「……。万が一がないように務めよ」


「承知しました」


これが十歳のとき、父上とした会話内容だ。


私は護衛のリダルを連れ、探索者協会の扉を開いた。皇太子の顔は流石に知れ渡っているので、認識阻害の魔法を使っている。私の一族は魔人族なので、魔石を使わずとも魔法を発動することが容易だ。であるが、この国で魔人族と言えば皇帝一族か、一部の貴族くらいのものだから、杖に魔石をつけて普人族だと偽装した。


探索者として活動を始め、二年が経過した頃、私に婚約者ができた。皇帝が言うには、東の辺境を守る辺境伯、もとい、ナイトフォール侯爵家のご令嬢であるとのことだった。ご令嬢は御歳十歳とのことだ。


なぜ辺境伯の娘を婚約者に選んだのか聞くと、ナイトフォール侯爵家は、普人族で皇帝派貴族でも天神教派貴族でもなく、中立の立場の家だからと言われた。


皇帝派貴族を増やそうとの考えだろうか。皇帝は、武力主義で他国を攻めることにも意欲を見せている。その足がかりにするつもりなのかもしれない。


私が皇宮にいる時に顔合わせが行われることになった。


「私、強い殿方としか結婚致しませんわ」


彼女は自己紹介をする前にいち早くそう発言した。驚いた。私に向かってそのような発言をする者など皆無であったし、なにより、私が探索者として活動していることを知らない貴族がいることに驚いた。


「グレース・ナイトフォールと申します。いざ尋常に勝負ですわよ!」


グレースは乗馬服を着ており (なぜドレスじゃないのかも疑問だ)、腰に鞭を携えていた。


見事な紅い髪を結い上げ、キリリとした紅い目が美しい少女であるのに、行動はまるで少年のようだった。


「エクセルシオール・ゲンナイオン・ロプトルだ。お相手さしあげる。かかってくるが良い」


勝負は予定調和のように、私の勝利で幕を閉じた。悔し涙を流すグレースに、なぜそのような格好をしているのか聞いてみた。


「他国の舞台を見に行ったときに、男装した女性が居たからですわ」


グレースが言うには、普人族が治める国の舞台が、女性だけで構成された舞台であり、男役も女性が演じていた。その女性があまりにも格好よく、感銘を受けたから男装をしているそうだ。


私が中断していた探索者の仕事を再開する時、グレースも一緒にやるといいだした。侯爵が許さないだろうと聞いたところ、侯爵は子どもをのびのびと育てる方針で、やりたいというと、一度はやらせてくれるのだとか。


よって、探索者生活二年目にして、二人の仲間が増えた。グレースとその侍女のアメリアである。


◆◆◆


この先、ラルジャンとも出会うのだが、それはまた別の機会に話そうと思う。

ルシオール視点の出会い話でした。


お読みいただきありがとうございました。

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