竜騎士団と魔石技師
ミストラルがグレースに、宮廷作法を教え込まれてるとき、首都から帝国全土に、ある知らせが届けられた。
それは、ルシオールが竜騎士っつう集団を創設したって知らせだ。
ナイトフォール侯爵が教えてくれたんだが、竜騎士団は、ドラゴンを捕らえるための騎士団らしく、竜を神として崇めてる、一部の信徒に猛反発を食らってるらしい。
竜神教か。天神教と違って知名度が低くて忘れてたぜ。
ドラゴンが自然の力を調整する存在だって教えてくれた爺さんは、竜神教徒だったのかもな。
ここで春まで待つ必要あるか? 王宮に忍び込んで、元凶のエピリスを、引き離しちまったほうがいいかもしれねえ……。
いや、王宮から出るのは簡単でも、入るのは難しいだろう。
転移魔石に対する防衛機能も充実してるだろうし、俺が国の英雄だっつっても、所詮元平民の一代貴族だ。
王宮の内部までは入れねえ。
社交シーズンまで待つしかねえな。
◆◆◆
領主城の練武場で体を解してたとき、近くの建物から白衣をまとった集団が、小さな荷車を引きながら、練武場内にやってきた。
「ロキュシオ研究長! これが成功したら、世の中が変わりますよ!」
「変人奇人散々言われてきましたが、これからは天才と呼ばれるはずです! きっと!」
「若造ども少し黙っとれ。煩くてたまらん!」
ロキュシオと呼ばれてる白髪の老人が、周りで騒いでる若者たちを一喝する。
「でもでも! 早く実験してみないと!」
「普人族っている?」
「いないよ」
「じゃあ駄目じゃない!」
それでも、男女合わせて六人は興奮した様子で、盛り上がりながら、練武場内に木の的を設置し、そこから距離をとった。
普人族がいねえと駄目な実験ってなんだ?
「ああっ!? レナウン卿!」
「ちょっとこっちきて!」
「これ持って! やってみてください!」
彼らの動きを目で追ってたら、あっという間に囲まれ、手に何かを持たされちまう。
なんだこれ? 持ち手があるな。指を引っかける部分か、ここは? 随分軽い。
「私たちに向けないで! 的! まと狙って!」
筒の先端からなにか出るのか? 的を狙うっつうことは、これは武器なんだな?
「弓で敵を狙うときみたいに! やっちゃってください」
指で引っかける部分を押せと? 分からんが、やってみるか。
木の的に筒先を向け、指に力を入れる。
パンッ!
音が鳴ったと同時に、木の的が木片となって飛び散った。
「無属性魔石万歳!!」
「きたーー!! ロキュシオ研究長天才!」
「論文書かなきゃ」
「画期的過ぎてやばい!」
「魔物撲滅、最強兵器!」
「もう私たち、魔人族だからって威張れない……?!」
いや、意味わからん。武器だっつうことしか、分かんねえ。
「レナウン卿。ご協力ありがとうございました!」
「後日、この武器差し上げますので、活用よろしくお願いしまーす!」
「他にも実験したいことあるので、暇なとき魔石技師の建物にきてください!」
こいつら、魔石技師だったのか。じゃあ、今の武器は魔石でつくられた物ってわけだな?
「武器の名前どうします?」
「いっそ、研究長の名前つけちゃいましょ!」
「名付けてー! ロキュシオ魔石銃!」
六人の若者たちは、俺に礼を言った後、さっさと木片を掃除して、練武場から去って行く。
賑やかだったな……。変人奇人なのはロキュシオじゃなく、あいつらなんじゃね?
「騒がせてすまんかったの。あやつら浮かれおって」
「今のは何の実験だったんだ?」
置いてかれたらしいロキュシオが、俺に向かって謝るのを聞いた後、疑問を解消するために質問する。
「あれはの……」
◆◆◆
ロキュシオの話によると、あれはやっぱり魔石でつくられた武器だった。
無属性魔石を鍛治職人に溶かして貰い、さっきの形の武器にしたらしい。
詳しいことは専門的過ぎて、俺には分からねえが、事前に属性魔法を使うための補助機能や、追尾機能をつけておくことで、普人族や獣人族でも簡単に、遠距離攻撃魔法が使えるようになってるみたいだ。
武器の中に入れる魔石の種類を変えると、睡眠攻撃ができたり、炎攻撃や氷攻撃、色んな攻撃ができるかもしれないと言い、ロキュシオは建物に戻って行った。
本当にそれができるなら、夢のような武器だな。
あいつらがはしゃいでたのは、無理もないことだ。




