ビリカ曰く
リダルからルシオールの現状について話を聞いた俺は、罪悪感に駆られていた。
エンハンブレ伯爵と言えば、俺にミストラルを捕まえて来いと命令し、俺がロプトル帝国から逃亡することになった元凶だ。
俺が帝国から居なくなって、腐った貴族を根絶やしにして回ったルシオールが、エンハンブレ伯爵領でおかしくなったと聞いちまったら、俺でなくとも良心が痛むんじゃないか?
とりあえず、通信魔石でアメリアにリダルの無事は伝えた。
あとは、アメリアとリダルの間で、手紙のやり取りか何かするだろう。
……さて、どうしたものかな。黒翼の天神族らしき女か。リダルが命の危機を感じるほどだったんだろ? 正体が分からないまま、戦いを挑むのは不利だな。
浮島の温泉に浸かりながら悩む。
ビリカ……はあてにならなそう、クルムなら何か知ってるかも知れんが、まだ起きる気配なし。
温泉の中で眠り続けてるクルムを見る。
気のせいかもだが、こいつ、少し成長してる気がすんだよな。少年が青年の一歩手前くらいになった感じに。
◆◆◆
浮島は、ミストラルが色々手を加えてるおかげで、温泉の他に、畑、立派な家、その他、生活に必要な物、全てが揃う場所になっていた。
やっぱ、魔法を魔石なしで使える奴らって、羨ましいと思っちまうぜ。
温泉から上がり、浮島を散策しながら物思いにふける。
「あんた、そんな場所でぼんやりして、どうしたのよ?」
ここは花壇だったか。
ミストラルがビリカの要望でつくった花壇だ。
ビリカは花の世話でもしてたんだろう。
だから、ここで突っ立ってた俺に気づいたんだな。
出会いついでに、一応聞いてみるか。
「……黒翼の天神族って存在するか?」
「私の質問に対する答えは!? まあ、いつものことだからいいけど。……存在するらしいわよ。噂で聞いたことがあるわ。狂っちゃった可哀想な天神族たち」
狂う。クリスタニア王国の国王だったあの男みたいに? 精神に異常をきたした天神族なのか?
「狂った天神族?」
「そう、機械の動作が狂ったり、魔法の発動が狂ったりするように、天神族も狂うことがあるのよ。この前の高貴なティアーリカさんだって、レントっていう人間が死んでたら、狂って黒翼になってたかもしれないわね」
精神に強い衝撃を受けると、黒翼になるのか。
だとすると、リダルが見たエピリスっつう女も、黒翼になる前に、何かがあったってことだよな。
「黒翼になった天神族はどうなるんだ?」
「ここからは本当にあやふやな知識で、間違ってるかもだけどいい?」
「ああ。全部教えてくれ」
正誤は自身で確認する。
「まず、浮島には戻れないみたい。それから、信仰力も受け付けなくなるようね。最後に、魔力を求めるようになるらしいわよ。天神族が魔力を求めるだなんて、おかしな話よね! 魔力なんて使うことできないのに!」
黒翼の天神族は普通の天神族と対称的な存在みたいだな。
ミストラルも信仰力と相性が悪いって言ってたことがあった。
魔力と信仰力はお互い、相性が悪いのか?
ビリカの話が全て合ってるんだとしたら、黒翼の天神族って、長ぇな。仮に黒天族と呼ぶことにして、黒天族は魔力で強くなるのかも知れない。
普通の天神族、は普通に天神族でいいか。天神族が信仰力で強くなるのと同じように。
ミストラルは言うなれば、魔力の塊みたいな存在だろ?
黒天族には格好のご馳走ってわけだ。
安易にミストラルを連れて、ルシオールのとこに行けなくなったな。
果たして風魔法のみで、エピリスに対抗できるか?
多分エピリスの能力は、ビリカと似てるはずだ。
人を操り、従わせる。リダルから聞いたルシオールの様子はまさに、そうだろう。
ルシオールと戦って勝てる想像ができねえ。
またミストラルに特訓、頼んでみるか。




