比武大会[勝ち抜き戦②]
休憩時間を挟んで、四試合目の相手はカイルスだった。
「お久しぶりですラルジャンさん。対戦よろしくお願いします」
ここまで勝ち残ったのか。元剣闘士なだけあるな。
対人戦と対魔物戦、相当場数を踏んできてんだろ。
「こっちこそよろしく。あんたと対戦してみたくてしょうがなかった! 存分に楽しもうぜ!」
カイルスの武器は大剣二本。両手に一本ずつ持ち、構えている。二刀流か。
さすがは俺と同じ人種だ。身体強化魔石の扱いに優れてるな!
俺は普段通り、一本の大剣を構える。
試合開始の合図が出るが、お互い動かない。
獣人族は身体強化以外の魔法を扱うのは苦手だ。
魔人族のように火や土、水や光、その他、属性攻撃魔法を使ってくることは、まずないと考えていいだろう。
「そちらからどうぞ?」
右手の大剣を右肩後方に、左手の大剣を俺に向けた体勢で、カイルスが俺を挑発する。
先に動いた方が負けるとは限んねえぞ。
「遠慮なくやらせてもらうぜ!」
言うと同時に瞬身。大剣で斬撃を繰り出す。
この攻撃は防御されたが、それは囮だ!
本命は風魔法で浮遊させてたもう一本の大剣。
カイルスの背後に浮かせていた大剣は、右手の大剣の防御を掻い潜る、かと思いきや、カイルスに空高く跳躍され、避けられちまった。
勘が鋭くて嫌んなるぜ!
「浮遊魔石ですか? 武器を浮かせて攻撃するだなんて、斬新な発想ですね」
「だろ? 避けられてちゃ意味がねえんだがな!」
俺の攻撃を冷静に分析されんのも、我慢ならねえ。
二本の大剣を持ったカイルスに、立て続けに攻撃されるのを、一本の大剣で防御しながら、勝機を伺う。
……風刃っ!
俺は風魔法で目に見えない刃を無数に発生させ、カイルスの急所を避けた全身を攻撃した。
一瞬にして多数の傷を負ったカイルスは、目を見開いて倒れ込む。
「属性魔法攻撃を使える獣人族もいるってこと、これで分かっただろ?」
相手の目に見えない攻撃っつうのが、卑怯な気がしてあんま使いたくなかったんだが。
攻撃魔法を使っちゃいけねえって規則はないからな。
運が悪かったと思ってくれ。
カイルスが倒れたことで、四試合目は俺の勝利で幕を閉じた。
救護室に運ばれる際にカイルスは「負けたのはいつぶりかな。貴重な体験になったよ。私の代わりに優勝目指して頑張ってくださいね」と言い、疲れた様子で眠りについた。
負かした相手に激励されちまったら、誰が相手でも勝ってやらねえとだな。
◆◆◆
一つの組の勝者が決まる、五試合目の相手はノアで、少し驚いたが、リダルと互角に戦える男だ。こうなるのは当然だったのかもな。
森人族で仁術師、しかもリダルと同程度の実力者。
奴隷商との戦いから、主な武器は鋼糸と刃針、短刀くらいだと思うが、実際に対戦した訳じゃねえからなんとも言えん……。
森人族っつう人種にも詳しくねえからなあ。
どんな攻撃を仕掛けてくるんだか。未知数で興奮するぜ。
「貴方にはここで負けていただきます」
存外本気の声音で少し驚く。
「レントに雪辱を果たすと約束してんだ。負ける訳にはいかねえ、諦めな!」
三本目の大剣も必要になるかもしれねえ。
さて、試合開始の合図も出たことだ、ノアの出方を伺いながら、慎重にやらせてもらおうか!
ノアの体勢は自然体で、手に何か持ってる様子はない。
鋼糸と刃針はどこだ?
……ッ! 地中から鋼糸だと!?
即座に風魔法で空中に浮かぶ。
俺を拘束するつもりだったのか。戦法としちゃ悪くねえ。
「この技、初見の方に避けられること、最近多いんですよね……。戦い方を変えるか検討しないと」
顎に手を当てノアがボソリと呟く。
魔石を使った感じじゃないな。魔人族と同じように、魔石がなくても魔力を使えるのか?
地上に降りるのは危険だな。距離をとらされた……。
──ザシュッ!
なんだと!? 突如出現した刃針に、右腕を傷つけられる。
どっから飛んできた?
「これも避けられたら、どうしようかと思いましたよ。良かったです」
「この攻撃方法、魔法じゃねえな。森人族特有の能力か?」
空中に浮いてる俺の周辺から、次々と刃針が飛んでくる。
空間魔石かとも思ったが、空間魔石は一度に沢山の空間をつくれる魔法じゃない。
「秘密です。手の内を晒す訳がないでしょう?」
「そりゃ、そうだ……なッ!」
いつまでも俺が、逃げ回ってると思うなよ?
風壁! 瞬身。
風魔法で刃針を防御し、大剣を構えながらノアに接近する。
ノアは鋼糸で身を守ろうとするが、もう遅いぜ!
風刃魔法で鋼糸を切断すると共に、大剣でノアの体を横薙ぎに斬りつけた。
「短期間でここまで成長してるとは……。降参です」
ノアが口の端から血を滴らせ、審判に負けた合図を送る。
「お前はレントの目的に協力してんのか?」
だから全力で俺に挑んできたのかもしれねえ。レントを優勝させるためにな。
「明白でしょう? 私に勝った実力に免じて、さきほどの質問に答えましょう。あれは『精霊の道』ですよ。あとはご自分でお考えください」
レントと一緒に旅してたんだ。協力者に決まってるか。
……精霊の道ねぇ。森人族は精霊と密接な繋がりを持つ人種ってことか?
ノアはその後、自身の足で救護室に向かって行った。
「仁術師が治療を受けに行くなんて、笑えますね」
そんな皮肉を口にしながら。
……仁術師でも治療が必要なときはあるだろ……?
救護班の手を借りず救護室に向かうとこに、変な誇り高さが伺えて、複雑な性格してるなと、面白味を感じる。
一つの組の勝者となった俺は、午後からの決勝戦に備えるため、休憩所に向かうことにした。




