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英雄とドラゴン  作者: ヒトミ
亡国の王子
39/60

比武大会[勝ち抜き戦②]

休憩時間を挟んで、四試合目の相手はカイルスだった。


「お久しぶりですラルジャンさん。対戦よろしくお願いします」


ここまで勝ち残ったのか。(もと)剣闘士なだけあるな。


対人戦と対魔物戦、相当場数を踏んできてんだろ。


「こっちこそよろしく。あんたと対戦してみたくてしょうがなかった! 存分に楽しもうぜ!」


カイルスの武器は大剣二本。両手に一本ずつ持ち、構えている。二刀流か。


さすがは俺と同じ人種だ。身体強化魔石の扱いに(すぐ)れてるな!


俺は普段通り、一本の大剣を構える。


試合開始の合図が出るが、お互い動かない。


獣人族は身体強化以外の魔法を扱うのは苦手だ。


魔人族のように火や土、水や光、その他、属性(ぞくせい)攻撃魔法を使ってくることは、まずないと考えていいだろう。


「そちらからどうぞ?」


右手の大剣を右肩後方に、左手の大剣を俺に向けた体勢で、カイルスが俺を挑発する。


先に動いた方が負けるとは(かぎ)んねえぞ。


「遠慮なくやらせてもらうぜ!」


言うと同時に瞬身(しゅんしん)。大剣で斬撃を繰り出す。


この攻撃は防御されたが、それは(おとり)だ!


本命(ほんめい)は風魔法で浮遊させてたもう一本の大剣。


カイルスの背後(はいご)に浮かせていた大剣は、右手の大剣の防御を()(くぐ)る、かと思いきや、カイルスに空高く跳躍(ちょうやく)され、避けられちまった。


勘が鋭くて(いや)んなるぜ!


「浮遊魔石ですか? 武器を浮かせて攻撃するだなんて、斬新(ざんしん)な発想ですね」


「だろ? 避けられてちゃ意味がねえんだがな!」


俺の攻撃を冷静に分析されんのも、我慢ならねえ。


二本の大剣を持ったカイルスに、立て続けに攻撃されるのを、一本の大剣で防御しながら、勝機を(うかが)う。


……風刃(ふうじん)っ!


俺は風魔法で目に見えない(やいば)無数(むすう)に発生させ、カイルスの急所を避けた全身を攻撃した。


一瞬にして多数の傷を()ったカイルスは、目を見開いて倒れ込む。


「属性魔法攻撃を使える獣人族もいるってこと、これで分かっただろ?」


相手の目に見えない攻撃っつうのが、卑怯(ひきょう)()がしてあんま使いたくなかったんだが。


攻撃魔法を使っちゃいけねえって規則はないからな。


運が悪かったと思ってくれ。


カイルスが倒れたことで、四試合目は俺の勝利で幕を閉じた。


救護室に運ばれる際にカイルスは「()けたのはいつぶりかな。貴重な体験になったよ。私の代わりに優勝目指して頑張ってくださいね」と言い、疲れた様子(ようす)で眠りについた。


()かした相手に激励(げきれい)されちまったら、誰が相手でも勝ってやらねえとだな。


◆◆◆


一つの組の勝者が決まる、五試合目の相手はノアで、少し驚いたが、リダルと互角に戦える男だ。こうなるのは当然だったのかもな。


森人族(しんじんぞく)仁術師(じんじゅつし)、しかもリダルと同程度(どうていど)の実力者。


奴隷商との戦いから、(おも)な武器は鋼糸(こうし)刃針(はばり)、短刀くらいだと思うが、実際に対戦した訳じゃねえからなんとも言えん……。


森人族っつう人種にも詳しくねえからなあ。


どんな攻撃を仕掛けてくるんだか。未知数(みちすう)興奮(こうふん)するぜ。


「貴方にはここで負けていただきます」


存外(ぞんがい)本気の声音(こわね)で少し驚く。


「レントに雪辱(せつじょく)を果たすと約束してんだ。負ける訳にはいかねえ、諦めな!」


三本目の大剣も必要になるかもしれねえ。


さて、試合開始の合図も出たことだ、ノアの出方(でかた)(うかが)いながら、慎重(しんちょう)にやらせてもらおうか!


ノアの体勢は自然体で、手に何か持ってる様子はない。


鋼糸(こうし)刃針(はばり)はどこだ?


……ッ! 地中(ちちゅう)から鋼糸だと!?


即座(そくざ)に風魔法で空中(くうちゅう)に浮かぶ。


俺を拘束するつもりだったのか。戦法としちゃ悪くねえ。


「この(わざ)、初見の(かた)に避けられること、最近多いんですよね……。戦い方を変えるか検討しないと」


(あご)に手を当てノアがボソリと呟く。


魔石を使った(かん)じじゃないな。魔人族と同じように、魔石がなくても魔力を使えるのか?


地上に降りるのは危険だな。距離をとらされた……。


──ザシュッ!


なんだと!? 突如(とつじょ)出現した刃針に、右腕を傷つけられる。


どっから飛んできた?


「これも避けられたら、どうしようかと思いましたよ。良かったです」


「この攻撃方法、魔法じゃねえな。森人族特有の能力か?」


空中に浮いてる俺の周辺から、次々と刃針が飛んでくる。


空間(くうかん)魔石かとも思ったが、空間魔石は一度に沢山の空間をつくれる魔法じゃない。


「秘密です。手の内を(さら)す訳がないでしょう?」


「そりゃ、そうだ……なッ!」


いつまでも俺が、逃げ回ってると思うなよ?


風壁(ふうへき)瞬身(しゅんしん)


風魔法で刃針を防御し、大剣を構えながらノアに接近する。


ノアは鋼糸で身を守ろうとするが、もう遅いぜ!


風刃(ふうじん)魔法で鋼糸を切断すると(とも)に、大剣でノアの体を横薙(よこな)ぎに斬りつけた。


「短期間でここまで成長してるとは……。降参です」


ノアが口の(はし)から血を(したた)らせ、審判に負けた合図を送る。


「お前はレントの目的に協力してんのか?」


だから全力で俺に挑んできたのかもしれねえ。レントを優勝させるためにな。


明白(めいはく)でしょう? 私に勝った実力に(めん)じて、さきほどの質問に答えましょう。あれは『精霊の道』ですよ。あとはご自分でお考えください」


レントと一緒に旅してたんだ。協力者に決まってるか。


……精霊の道ねぇ。森人族は精霊と密接な(つな)がりを持つ人種ってことか?


ノアはその()、自身の足で救護室に向かって行った。


仁術師(じんじゅつし)が治療を受けに行くなんて、笑えますね」


そんな皮肉を口にしながら。


……仁術師でも治療が必要なときはあるだろ……?


救護班の手を()りず救護室に向かうとこに、変な(ほこ)(だか)さが伺えて、複雑な性格してるなと、面白味(おもしろみ)を感じる。


一つの組の勝者となった俺は、午後からの決勝戦に備えるため、休憩所に向かうことにした。

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