比武大会[初戦]
開幕式が終了すると、さっそく大会初戦が始まった。
レントが前に予想していた通り、魔人族の魔法がそこかしこで飛び交い、戦いに慣れてなさそうな奴らから脱落していく。
傭兵や探索者じゃねえ、一般人まで参加してんのは、第二王女との結婚目当てか? 無謀だろ。
俺は背に二本の大剣を背負ってるが、まだ使う必要性がない……と言うか、飛んでくる攻撃魔法を避けてるだけで充分だ。
開幕式では、第一王女らしい人物とディーを見つけることができなかったな。
公式的な行事に参加できない程、第一王女は国王に嫌われてんのか?
国王の傍にはティアーリカと王妃、あとは、国王の愛妾だろう女性たちと、近衛騎士くらいしかいなかった。
ディーが言うには、国王は病を患ってんだろ? 跡継ぎはどうなってんだ? この国には王子がいないみたいだが。
……あんだけ愛妾がいるんだ。跡継ぎと目される赤子でもいんのかもな。
「そんなとこで、ボーッと突っ立ってると格好の的よ!」
幼げな少女の声とともに、俺に向かって続けざまに矢が放たれてきた。
チッ! 追尾魔法がかかってんな。
大剣を抜き、矢を切り落とす。
「残念だったな! 俺を狙ったこと後悔させてやるぜ」
矢は俺の斜め後方、防壁魔法でつくったんだろう、土壁の上に立っている少女から放たれたようだ。
「ちょ、ちょちょまって! 止まって! ごめん、ごめんってばっ!」
風魔法で少女の元に飛び、大剣を振り下ろそうと構えた瞬間、小柄な少女は身軽に土壁から跳びおり、逃げ回りながら叫ぶ。
少女が走るたび、二つの団子結びの青髪が揺れ、小動物を虐めてる気分になってきた。
「次から狙う相手に気をつけろよ!」
優勝への障害にはなりそうにねえし、こいつを狙い続ける必要はねえか。
「見逃してくれるの!? ありがとう! 私はリンリン。本戦で当たったら手加減よろしくっ」
身軽に動くためか、軽装の少女はリンリンと名乗り、軽口を言いながら、他の参加者に狙いを定め、矢をつがえる。
追尾魔法がかけられた矢だ。当然、狙ったらしい相手に命中した。
絶妙に急所を外してる。良い魔力の制御能力だ。
人を射ることに躊躇もない。
こう見えて熟練の傭兵か、探索者なんだろうな。
俺がリンリンについて適当な判断を下してると、いつの間にか闘技場内には、数十人の参加者だけが、勝ち残っていた。
その中にはもちろん、レント、ノア、リダル、カイルスがいて、他にも特徴的な参加者が確認できる。
同時に戦闘終了の合図が出された。
この場に残ってる数十人、数えて六十四人が明日開催される勝ち抜き戦に出られるわけだ。
勝ち抜き戦は、二つの組に分けられ、計五試合でそれぞれの組の勝者が決まるらしい。
っつうわけで、この大会で優勝するためには、まず五試合戦い、一つの組で勝者になった後、別の組の勝者に勝つ必要があるってことだ。
組み分けは明日発表される。
浮島で編み出した技を披露するのが楽しみだぜ!
俺は背負ったままの大剣二本に意識を向け、上機嫌に闘技場を後にした。




